超ひも理論6(異次元への旅) | TERUのブログ

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つれづれに

素粒子の密度から「無限大」を消し去るために生まれた「ひも理論」。これがいま、重力をも統一した、大統一理論の候補として挙げられています。

なぜなんでしょう?

素粒子は点(0次元)ではなく、ひも(1次元)なのだと、南部博士は考えましたが、彼の主張は、それだけではないんです。南部博士は、強い力と呼ばれる、素粒子の間に働く力にも、ひもの概念を持ち込みました。

素粒子というと、われわれの身体のように「物質」を作るモノを連想しますが、じつは「力」も素粒子によって伝わるのです。

たとえば、電磁気力は、光子(フォトン)を介して伝わります。弱い力を伝えるのは、ウィークボソンという粒子で、強い力はグルーオンという粒子が伝えます。

そして問題児の重力は、重力子という粒子が伝えるのだろうと考えられています。(重力子は、まだ発見されていない仮説上の粒子です)

このように、「力」も、素粒子とは切っても切れない関係なので、「ひも理論」が正しいのであれば、「力」も、ひもであるはずです。

ですが、昨日の記事で書いたとおり、「ひも理論」は、実験の結果、どうもダメそうだと言うことが明らかになったのですが……

その後、力を統一するために、「超対称性」という新しいアイデアが生まれました。「ひも理論」は、この「超対称性」を組み入れることで、「超ひも理論」として生まれ変わったのです。

ここで「超対称性」を説明したい……のは山々ですが、ぼくには無理かな(汗)。難しすぎて、説明できるほど理解してないんですよ。

だから無謀を承知で、すっごく簡単に(というか、ぼくが理解している範囲で)書きます。

いまの物理学では、素粒子に「スピン」という、「素粒子の自転の勢い」があると考えられています。じつは、素粒子が、それぞれ「違う素粒子」のように見えるのは、この「スピン」の値が違うからだというのです。1回転している素粒子と、1/2回転している素粒子では、別の種類になるというわけですね。

さて、電気にはプラスとマイナスがあり、磁気にはN極とS極があるように、素粒子には、それぞれ反粒子とよばれる双子が存在します。「スピン」にも、これと同じように、スピンの異なるパートナーがいると考えられているのです。それが「超対称性」です。

ただ、「対称」と言っても、単純に反対のスピンというわけではなくて、もっと数学的に複雑なので、わざわざ「超」をつけて、「超対称性」と呼んでいるそうです。

これ以上の説明は、ぼくには無理なので(汗)、そういうものだと思ってくださいませ。

先ほど書いたとおり、重力までを含んだ「力」を説明できる理論として、「ひも理論」に、素粒子の「超対称性」を組み入れて再構築されたのが「超ひも理論」なのです。(どんなふうに組み入れたかは、難しすぎるので割愛……汗)

ただし、「超ひも理論」が矛盾なく成り立つためには「10次元」が必要なのだそうです。その理由を正しく説明するのは、これまたぼくの知識では無理ですが、こんなふうに考えてみたらどうでしょう。

たとえば、いま「」という文字があるとしましょう。2次元の世界では、この文字を回転させて「」にすることが出来ますよね。3次元の世界では、さらに出来ることが増えます。「」を持ち上げて、空中でひっくり返すことで、「」にすることができるのです。

このように、次元が上がると、低次元では出来ない(成り立たない)ことができるようになるのです。低い次元で「ひも理論」はうまく機能しませんでしたが、次元を上げていけば、矛盾がなくなっていき、10次元が、ちょうどピッタリ合う世界だったようです。

そもそも、「ひも」って考え方は、「重力」にとっても、便利なものなのですよ。

たとえばAという粒子と、Bという粒子が衝突することを考えてみましょう。もしも素粒子が「大きさのない点」だとしたら、衝突したときの距離も「ゼロ」ですよね。重力は距離の2乗に反比例しますから、距離がゼロだと、AとBの素粒子にかかる重力は、「無限大」になってしまうのです。素粒子は衝突しただけで「ブラックホール」になってしまうわけですね。

でも、素粒子が「ひも」ならば、衝突したときの距離がゼロにならないので(1次元として長さがありますから)、重力の無限大問題は回避できます。

このように、「超ひも理論」は、いろんなことをうまく説明できそうだというので、多くの研究者が、研究に参加するようになったのですが……

われわれ一般人には、どうしても10次元というモノがイメージできませんよね。その点、物理学者の先生たちは、どう考えているんでしょう。

次元の研究(正確には余剰次元の研究)で有名な、ハーバード大学のリサ・ランドール博士がおっしゃるには、彼女自身は、高次元の世界を、映像的にイメージすることはないそうです。数学者の中には、そういう訓練をしている人もいるそうですが、物理学としては、高次元があるのかないのかが重要なのであって、高次元をイメージするのは、必要のないことなんだそうです。

これ、わかる気がする。

高次元の世界を映像的にイメージするって、「観念」的な世界に突入してしまう気がするんです。いえ、コンピューターを使えば、4次元の超立体を、余剰次元方向に回転させて、3次元への投影図を描くことは出来ますよ。でも大元の、4次元世界にある「超立体そのもの」を描くことは不可能です。

それをね、イメージしようっていうのは、言葉は悪いけど、悟りの世界ですよ(苦笑)。どっかの山の中で霞でも食って、仙人にならなきゃ高次元をイメージするのは無理っぽい。

でもね、そうはいっても、1つだけ、どうしても発しなきゃいけない質問があるのです。

「あのー、お聞きしたいんですが、10次元はどこにあるんですか?」

アインシュタインが、5次元がどこにあるのか聞いたように、いまぼくらは、「超ひも理論」に対して、同じ質問が必要です。

はい、ここでまた半世紀前の、カルツァ=クライン理論を思い出してくださいませ。クラインは、5次元が小さい点の中に押し込まれていて、隠れて見えないだけだとして、5次元の存在を許しました。

この古くさい理論(なにせ半世紀前)が、最新の「超ひも理論」にも応用されて、4次元時空にプラスされた「6次元」分は、小さく丸まって存在していると考えることにしたんです。それは、本当に小さく小さく丸まっているので、われわれの空間に影響を及ぼさないのです。

やっぱり、なんとなく詭弁に聞こえますが(苦笑)。

プリンストン高等研究所の、エドワード・ウィッテン博士らが、次元を小さく丸め込むこと(コンパクト化)は、数学的には可能であることを示しました。あくまでも数学的にですが。

さて、そろそろ、この一連のブログ記事を締めくくりましょう。

いままで見てきたように、「超ひも理論」は、数学的には、なんとか成り立ちそうな気配が漂っています。ですが、まだまだ未完成ですし、言うまでもなく実験と観測という、科学にとってもっとも重要な試練をパスしていません。あくまでも「数学」でのお話なんですよ。

はたして実験(観測)で、たしかめることはできるんでしょうか?

できます。直接は無理ですが(理論自体が、余分な次元は、われわれに直接影響を及ぼさないとしているので)、間接的にはできるはずだと、科学者は考えています。

じつは、ヒッグス粒子の発見が濃厚になってきた、セルンのLHC(大型ハドロン衝突加速器)の実験で、4次元時空より、さらに上の次元が見つかるかもしれないと期待されています。

もしも、未発見の重力子が見つかって、その崩壊を観測できれば、第5の次元が存在する可能性が高まるそうです。(ぼくも理論を理解してるわけじゃないんで詳しくは書けませんけど、重力子だけは、第5の次元に移動できると考えられているため)

もしも、第5の次元が見つかれば、さらに6次元、7次元、8次元、そして「超ひも理論」が要求している10次元だって存在するかもしれません。少なくとも、その可能性が高まります。

もしも、もしも、もしも……

そう。まだ、どの理論も「もしも」の段階でしかありません。ヒッグス粒子は発見できそうですが、「超ひも理論」が復活するキッカケとなった「超対称性理論」が予言する「超対称性粒子」は、まだ見つかっていません。

今年の8月ごろのニュースでは、悪いことに、理論が示す場所には、「超対称性粒子はなさそうだ」ということが、だんだん濃厚になってきました。気の早い人は、「超対称性理論」を考え直さなきゃ! なんていい出してます。

「超対称性理論」が間違っていたら、それを組み込んだ「超ひも理論」も間違っているわけで……

やれやれ。3歩進んだと思ったら2歩下がるって感じ。人生だけでなく、科学もワンツーパンチ(古っ!)ですな。

このように、現代物理学は、まだまだわからないことだらけ、解決しなければならない問題だらけです。

最後に、もう一言だけ。

すべての力を統一する理論の候補は、「超ひも理論」だけではありません。ほかにも、「ループ量子重力理論」というのも有力です。こちらは、研究者の数では「超ひも理論」に劣るようですが、理論自体が劣っているという雰囲気はなく、いまのところ、2つの理論のどちらが成功するかは、だれにもわかりません。

以上、6日間にわたってお送りしてきました「超ひも理論」の解説を終わりにしたいと思います。最後までお付き合いくださったみなさん、ありがとうございました。