マクスウェルの悪魔 | TERUのブログ

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つれづれに

たまには難しい話をしますかね。よっこらしょっと(←重い腰を上げたことを示す文学的表現)。

やっと涼しくなってきて、心身ともにホッとしている今日この頃ですが、先々週、まだ残暑が厳しいころ、突然、デスクトップパソコンがフリーズしました。

以前、ノートPCが動かなくなったと書きましたけど(いつかキチンと書きますが、もう完全に壊れたみたいです)、こんどはデスクトップですよ(涙)。

代替えのノートPCが動かないので、これでデスクトップも壊れたら大変! と、青くなっていろいろ調べてみたんですが、どうも、熱が原因じゃないかという結論に至りました。パソコンの側面を開けて、扇風機で強制的に空冷しながら使ってると正常なんです。ところが、蓋を閉じると、またフリーズしてしまう……

熱。これはコンピューターにとって大敵なのです。故障の最大の原因ですな。

しかし、ふと疑問に思いませんか。コンピューターは「情報」を得るための計算機ですよね。ここで言う情報とは、インターネットを見てなにか調べるってことではなくて、「1+1=2」みたいな計算結果を得ると思ってください。

コンピューターは、この計算のために「電気」を使いますよね。その電気は回路の中を駆け巡って、けっきょく「熱」として空気中に飛散していく。よーするに、エネルギーが消費されたわけです。(そのほとんどはむだな熱ですが)

その結果、われわれは、1+1が、2であるという情報を得る。

さあ、ここで問題です。われわれが得た「情報」には、エネルギーがあるんでしょうか?

問いの意味がわかりにくいですかね。エネルギーの保存則とか、エントロピーとか言い出すと長くなるので、ここでは、ごく簡単に言いますと、エネルギーを使って得た情報にも、エネルギーがあるんじゃないか? ってことです。

もしそうだとしたら、その「情報」を、「熱」にも変換できるはずですよね。

いや、そーいうことはできないんじゃねーか? と150年も前に、マックスウェルという物理学者が言い出したんですよ。

詳しくは書きませんが、マックスウェルは、てんでバラバラに動き回る気体の分子、1個1個を見分けて、仕分けも出来る「悪魔」を想定しました(純粋な思考実験として)。

その悪魔は、エネルギーを使わずに、情報を操作するだけで、気体を熱したり(動きの速い分子だけ偏らせる)、冷ましたり(動きの遅い分子だけ偏らせる)ことができるだろうと考えたのです。

ここで重要なのは(ごく簡単に言って)、マックスウェルは、分子の動きを知る(観測としての情報)には、エネルギーは必要ないって考えたことですね。

もしそうだとしたら、1+1の答えである2には、エネルギーはないってことになる。じゃあ、情報って、いったいなに? エネルギーもなしに、どうやってそこに存在できるの?

この問題は、すごーく難しくて、科学者たちを悩ませ続けました。マックスウェルが、問題を提起したのは、1867年ごろと言われていますが、「答え」が発表されたのは、なんと1982年ですよ。115年間も、マックスウェルの悪魔は生き続けたのです。

が!

マックスウェルの悪魔を葬り去るための「答え」が、これまた不思議でしてねえ。情報って言うのは、知って、保持しているだけなら、エネルギーは消費しないそうです。情報がエネルギーを使うのは、それを「忘れる」ときなんですって!

先の、マックスウェルの悪魔で言うと、悪魔は、ひとつの分子の動きを知ったあと、つぎの動作をするためには、べつの分子の動きを知る必要があるので、前のことを忘れなくちゃいけない。この「忘れる」とき、エネルギーが消費される(正確にはエントロピーが増大する)というんです。

へー……そ、そうなんだ……

どうも、よくわからん話ではありますが、本当にそういうことが起こっているようです。2年ほど前の、2010年11月に、中央大学が東大と共同で、情報を熱に変換する実験に成功したそうですからね。

じゃあさ、忘れなきゃ、エネルギーは消費しないんだよね!

うん。学者の中には、われわれ生物の細胞では、ごく短時間ながら、情報を忘れずに保持することで、エネルギーを消費しないシステムが機能しているんじゃないかと考えられているそうです。

なんか、壮大なお話になってきましたよ。そろそろ手に負えないので、この辺で終わります。

あ、ここで話したのは、物理理論のお話であって、実際にコンピューターが、回路の中で熱を出す作用(よーするに摩擦熱)とは違いますので、お間違いなきよう。