HDR | TERUのブログ

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つれづれに

今日は写真のお話。

以前、LightroomというAdobeの現像ソフトを紹介しましたよね。そのとき、有料の現像ソフトはカメラメーカーが無料で配布している現像ソフトより高機能だと書きました。

それはその通りなのですが、しかし、メーカーが無料で配布している現像ソフトだって、着実にバージョンアップを重ねて、機能を増やしてきました。

少し前に、キヤノンが配布している、Digital Photo Professional(以下DPP)がバージョンアップして、新しい機能が追加されたので、今回はそれを紹介しましょう。

新しく加わったのは、「HDR合成」という機能です。

HDRとは、ハイ・ダイナミックレンジの略語で、そもそもダイナミックレンジとは、アナログ信号の中で識別できる最小値と最大値の比率のことです。

なんて書くと、わけがわかりませんが、写真の場合は、明るいところと暗いところの差と考えてもらえば大丈夫でしょう。フィルムの時代は「ラチチュード」なんて呼んでいたのと同じです。

では、HDR合成とは、いったいなにをする機能なんでしょう?

ここからは具体例を挙げて説明していきましょう。

たとえばいま、空をバックに、五重塔を見上げるように撮影したとしましょう。

おや?

ちょうどそんな写真がありますよ。

なんて、調理済みの料理が出てくる料理番組のようにわざとらしいですが、じつはHDRの説明のために、大好きなお寺の屋根を(笑)わざわざ撮りに行きました。ホント凝り性だわ。

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それがこちら↑

ほら、空は明るいですから、五重塔に露出を合わせて撮影すると、空は白っぽく飛んでしまいます。

これでは写真的にイマイチなので、こんどは空に露出を合わせて撮影してみましょう。

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おやおや……空はたしかに写りましたが、こんどは五重塔が真っ暗です。

さあ、ここでHDR合成の登場です。写真で言うダイナミックレンジとは、明るいところと暗いところの差でしたよね。HDR合成とは、つまり明るいところと暗いところのそれぞれを生かすように、写真を合成してくれる機能のことなのです。

おっと、ここで重要なのは、合成する写真は、カメラを三脚などに固定して、1枚目と2枚目で、被写体がズレないようにすることです。被写体がズレていると、合成のときうまく重ね合わせることができませんからね。

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こんな風に三脚を使うのが一番ですが……この写真で使っているような細い三脚だと、露出を変えるためにカメラを操作するわずかな振動でも、少しズレちゃいます。その程度のズレならソフトウエアが自動的に調整してくれますが、気力と体力があるなら、大きな三脚を使うのがいいでしょう(ぼくは気力がなかった)。

さて、そうして用意した2枚を合成してみましょう。

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こんなふうに↑、明るい写真と暗い写真を2枚選んで、DPPのHDR合成機能を呼び出します。

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画面を見ていただくとわかる通り、写真は3枚まで選べますが、今回は2枚だけで挑戦してみます。

さあ、準備はできた。あとは、「HDR開始」ボタンを押すだけです。

すると……

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このように合成されました。これはプリセットの「ナチュラル」で合成した結果です。ナチュラルと言うだけあって、自然に見えるように軽めの処理になっているようです。(パラメーターの変更で処理の強さは変えられますが)

でも、これではおもしろくないので、よりHDR合成の効果が強い「絵画調」を選んでみましょう。

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ブログに載せた縮小画面では、あまり変わっていないように見えますが、絵画調のほうが、より印象的な仕上がりになるようです。

では、絵画調で合成した画像を保存します。

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いかがでしょう。最初にお見せした、明るい写真と暗い写真の、ちょうど中間のようになっていますね。これだけでも、もう十分にHDR合成の効果を実感していただけたと思います。

でもぼくは、この写真では、まだまだ満足はできません。撮影のとき、三脚の水平と垂直をちゃんと出していなかったせいで(お恥ずかしい)、五重塔が画面の中傾いてしまっているし、空の色もくすんでいて美しくないですよね。

ここから先は、ソフトウエア任せではなく、自分の手でレタッチしていきましょう。保存した画像をPhotoShopに取り込んで、五重塔の傾きを直し、空の彩度を上げて、全体のコントラストも調整すると……

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ほら、どうですか。同じ写真とは思えないくらい引き締まりましたね。これで五重塔の写真が、「作品」として完成しました。

自分で言うのもなんですが、この作品の大元は、最初にお見せした、あの「明るい写真」と「暗い写真」の2枚だったなんて、にわかに信じられないくらいですよね。でも、本当にあの2枚から作り上げたんですよ。

このように、写真を「作品」として仕上げたいと思ったとき、HDR合成機能は大いに役立ちます。ソフトウエアに任せるだけで、すぐ美しい写真ができるとはいいませんが、人間が手を加える手間を大いに軽減してくれるのは確かです。しかも無料のソフト(カメラに付属)についているのだから、いい時代になったものです。

それにしても……五重塔って、お寺の屋根フェチにはたまらん被写体ですな(笑)。

ねえ、ノンちゃんも、そう思いませんか?

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なんだか、ぼくにはわかりませーん。

ノンちゃんのように、動き回る被写体はHDR合成できません。風景写真でも、木の葉が風で揺れていたりすると、やはりそこだけ合成がうまくいきません。1枚目と2枚目の被写体にズレがあってはいけないから。

そういう意味では使いどころの難しい機能(技法)ですが、今回の五重塔のように、最初からHDR合成することを「狙って」撮ると、印象的な作品を作ることができるのです。欧米などでは、ずいぶん前から人気のある技法なんですよ。

じつは、モノクロフィルムの時代は、似たようなことを暗室でやっていました。いまの時代は、コンピューターとソフトウエアのおかげで、だれもが手軽に(しかもカラーで)できるようになったという感じでしょうか。

デジタル技術の進歩はありがたいですねえ~。