以前、LightroomというAdobeの現像ソフトを紹介しましたよね。そのとき、有料の現像ソフトはカメラメーカーが無料で配布している現像ソフトより高機能だと書きました。
それはその通りなのですが、しかし、メーカーが無料で配布している現像ソフトだって、着実にバージョンアップを重ねて、機能を増やしてきました。
少し前に、キヤノンが配布している、Digital Photo Professional(以下DPP)がバージョンアップして、新しい機能が追加されたので、今回はそれを紹介しましょう。
新しく加わったのは、「HDR合成」という機能です。
HDRとは、ハイ・ダイナミックレンジの略語で、そもそもダイナミックレンジとは、アナログ信号の中で識別できる最小値と最大値の比率のことです。
なんて書くと、わけがわかりませんが、写真の場合は、明るいところと暗いところの差と考えてもらえば大丈夫でしょう。フィルムの時代は「ラチチュード」なんて呼んでいたのと同じです。
では、HDR合成とは、いったいなにをする機能なんでしょう?
ここからは具体例を挙げて説明していきましょう。
たとえばいま、空をバックに、五重塔を見上げるように撮影したとしましょう。
おや?
ちょうどそんな写真がありますよ。
なんて、調理済みの料理が出てくる料理番組のようにわざとらしいですが、じつはHDRの説明のために、大好きなお寺の屋根を(笑)わざわざ撮りに行きました。ホント凝り性だわ。
![$TERUのブログ](https://stat.ameba.jp/user_images/20120506/19/teru-2010/13/ca/j/o0333050011958358635.jpg?caw=800)
それがこちら↑
ほら、空は明るいですから、五重塔に露出を合わせて撮影すると、空は白っぽく飛んでしまいます。
これでは写真的にイマイチなので、こんどは空に露出を合わせて撮影してみましょう。
![$TERUのブログ](https://stat.ameba.jp/user_images/20120506/19/teru-2010/4b/c2/j/o0333050011958351959.jpg?caw=800)
おやおや……空はたしかに写りましたが、こんどは五重塔が真っ暗です。
さあ、ここでHDR合成の登場です。写真で言うダイナミックレンジとは、明るいところと暗いところの差でしたよね。HDR合成とは、つまり明るいところと暗いところのそれぞれを生かすように、写真を合成してくれる機能のことなのです。
おっと、ここで重要なのは、合成する写真は、カメラを三脚などに固定して、1枚目と2枚目で、被写体がズレないようにすることです。被写体がズレていると、合成のときうまく重ね合わせることができませんからね。
![$TERUのブログ](https://stat.ameba.jp/user_images/20120506/22/teru-2010/b6/77/j/o0216030011958799508.jpg?caw=800)
こんな風に三脚を使うのが一番ですが……この写真で使っているような細い三脚だと、露出を変えるためにカメラを操作するわずかな振動でも、少しズレちゃいます。その程度のズレならソフトウエアが自動的に調整してくれますが、気力と体力があるなら、大きな三脚を使うのがいいでしょう(ぼくは気力がなかった)。
さて、そうして用意した2枚を合成してみましょう。
![$TERUのブログ](https://stat.ameba.jp/user_images/20120506/19/teru-2010/37/da/j/o0550034411958351960.jpg?caw=800)
こんなふうに↑、明るい写真と暗い写真を2枚選んで、DPPのHDR合成機能を呼び出します。
![$TERUのブログ](https://stat.ameba.jp/user_images/20120506/19/teru-2010/dd/b3/j/o0550035211958351962.jpg?caw=800)
画面を見ていただくとわかる通り、写真は3枚まで選べますが、今回は2枚だけで挑戦してみます。
さあ、準備はできた。あとは、「HDR開始」ボタンを押すだけです。
すると……
![$TERUのブログ](https://stat.ameba.jp/user_images/20120506/19/teru-2010/02/75/j/o0550041511958351963.jpg?caw=800)
このように合成されました。これはプリセットの「ナチュラル」で合成した結果です。ナチュラルと言うだけあって、自然に見えるように軽めの処理になっているようです。(パラメーターの変更で処理の強さは変えられますが)
でも、これではおもしろくないので、よりHDR合成の効果が強い「絵画調」を選んでみましょう。
![$TERUのブログ](https://stat.ameba.jp/user_images/20120506/19/teru-2010/f7/d7/j/o0550041511958351961.jpg?caw=800)
ブログに載せた縮小画面では、あまり変わっていないように見えますが、絵画調のほうが、より印象的な仕上がりになるようです。
では、絵画調で合成した画像を保存します。
![$TERUのブログ](https://stat.ameba.jp/user_images/20120506/19/teru-2010/8f/54/j/o0333050011958358638.jpg?caw=800)
いかがでしょう。最初にお見せした、明るい写真と暗い写真の、ちょうど中間のようになっていますね。これだけでも、もう十分にHDR合成の効果を実感していただけたと思います。
でもぼくは、この写真では、まだまだ満足はできません。撮影のとき、三脚の水平と垂直をちゃんと出していなかったせいで(お恥ずかしい)、五重塔が画面の中傾いてしまっているし、空の色もくすんでいて美しくないですよね。
ここから先は、ソフトウエア任せではなく、自分の手でレタッチしていきましょう。保存した画像をPhotoShopに取り込んで、五重塔の傾きを直し、空の彩度を上げて、全体のコントラストも調整すると……
![$TERUのブログ](https://stat.ameba.jp/user_images/20120506/19/teru-2010/d9/a9/j/o0400060011958358636.jpg?caw=800)
ほら、どうですか。同じ写真とは思えないくらい引き締まりましたね。これで五重塔の写真が、「作品」として完成しました。
自分で言うのもなんですが、この作品の大元は、最初にお見せした、あの「明るい写真」と「暗い写真」の2枚だったなんて、にわかに信じられないくらいですよね。でも、本当にあの2枚から作り上げたんですよ。
このように、写真を「作品」として仕上げたいと思ったとき、HDR合成機能は大いに役立ちます。ソフトウエアに任せるだけで、すぐ美しい写真ができるとはいいませんが、人間が手を加える手間を大いに軽減してくれるのは確かです。しかも無料のソフト(カメラに付属)についているのだから、いい時代になったものです。
それにしても……五重塔って、お寺の屋根フェチにはたまらん被写体ですな(笑)。
ねえ、ノンちゃんも、そう思いませんか?
![$TERUのブログ](https://stat.ameba.jp/user_images/20120506/19/teru-2010/76/cc/j/o0500036211958358637.jpg?caw=800)
なんだか、ぼくにはわかりませーん。
ノンちゃんのように、動き回る被写体はHDR合成できません。風景写真でも、木の葉が風で揺れていたりすると、やはりそこだけ合成がうまくいきません。1枚目と2枚目の被写体にズレがあってはいけないから。
そういう意味では使いどころの難しい機能(技法)ですが、今回の五重塔のように、最初からHDR合成することを「狙って」撮ると、印象的な作品を作ることができるのです。欧米などでは、ずいぶん前から人気のある技法なんですよ。
じつは、モノクロフィルムの時代は、似たようなことを暗室でやっていました。いまの時代は、コンピューターとソフトウエアのおかげで、だれもが手軽に(しかもカラーで)できるようになったという感じでしょうか。
デジタル技術の進歩はありがたいですねえ~。