コレットは~15話の続き妄想的な何か02 | よりみち小部屋。(倉庫)

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『花とゆめ』連載中の「コレットは死ぬことにした」の続き妄想、2話目。

1話をアップしてから、「コレットさんも好きです」というコメントをくださったGさま、ありがとうございました。
スキビスキーさんでも、コレットさんも好きな方がいらっしゃると分かって嬉しかったです♪

それでは、続き。
ハデスさんサイドです。

以下、興味のない方はバックプリーズ。






「おかえりなさいませ、ハデス様」
「うむ」
一日の仕事を終え自室に戻ったハデスは、出迎えたガイコツに身に着けていたアクセサリーを外して渡す。
「本日もお疲れ様でした。昨日に比べて死者は少なかったようですね」
「ああ」
「昨日はお疲れでしたから、今宵は早めにお休みくださいませ」
いつもの衣装に着替えたハデスは窓辺に腰かけ、ガイコツの差し出した盃を受け取る。
それをゆるりと口に運び、酒を楽しもうとしたその時……

「兄上ーーー!大変大変!大変ーーーー!!」
大きな声と共に、ゼウスが駆け込んできたのだった。

「ぜ、ゼウス様!何事ですか」
突然の来客に、ガイコツは大慌て。ハデスはため息をついて盃を置く。
「騒々しいな、ゼウス。一体何事だ」
「兄上っ!!のんびりしてる場合じゃないよ!大変なんだよ!」
ゼウスは座っているハデスの肩口を掴むと、グラグラとゆすった。
「……だから何があったと聞いている」
ぱしっと肩にかかったゼウスの手を払いのけてハデスが尋ねると、ゼウスは再び掴みかかってきた。
「コレットが!いなくなっちゃったんだ」
「は……?」
「だから!コレットが行方不明なんだ!」
ゼウスはぐいぐいとハデスを引っ張り、立ち上がらせる。
「コレットが行方不明、とはどういうことだ?」
「とにかく、天界に来てくれるのが一番早いよ!」
「……わかった」
ただぐいぐいとハデスの手を引っ張る今のゼウスには何を言っても無駄だろうと判断したハデスは深いため息をつき、大人しくゼウスに従った。


「ゼウス様!」
アポロンの宮殿でハデスとゼウスと出迎えたのは柊。
ゼウスに駆け寄ってきた柊は、隣にハデスの姿を見つけると一瞬びくりと体を震わせた後に足を折って挨拶をした。
「……ハデス様」
「ああ」
やはり自分は恐ろしいのか、と内心思いながらハデスは返事をする。
「ここでコレットが世話になっていたはずだが……行方不明になったというのは本当か?」
「はい」
柊は頭を下げたまま答える。
「どういうことか説明してくれ」
「分かりました」
柊は頭を上げると、宮殿の奥を指差した。
「まずはこちらに」

ハデスが案内されたのはアポロンの診療所。
机やソファの上はすっきりと片付いていたが、部屋の隅の床の上には乳鉢や乳棒、薬草の瓶などがひろげられている。
「日が暮れてから、診療は終了しました。そのあとに私はコレットの使いで薬草園に出かけました。その間に……」
「いなくなった、と?」
ハデスが柊の言葉につなげると、柊はこくりとうなずいた。
「はい」

ハデスはゆっくりと診療所に足を踏み入れてあたりを見回す。診療所内は薬を調合している最中だと物語っている一式以外は、乱れたところなどどこにもない。
「1人でどこかに出かけた、という可能性は?」
「それは……ありえないと思います」
ハデスの問いに、柊は即答する。
「コレットは好奇心旺盛ですが、1人で夜ふらりと出かけるようなまねはしないと思います。出かけるなら、必ず私の帰りを待って出かけるということを伝えてくれるはずです」
「急患だということは?」
「仕事熱心なコレットですからそれはありえるとは思います。でもやっぱりこんな状態で自ら黙って出かけるというのはありえません」
きっぱりと言い切った柊に、ハデスは目を細める。
「コレットが行方不明だとは聞いたが、お前はコレットが自らここを離れたのではないと考えているのか?」
「はい」
「何を根拠に?」
ハデスに問われた柊は、床に置かれていた開けっ放しの薬草瓶を手に取り差し出した。
「これです」
「薬草瓶?」
「この薬草は天界ではごく一般的に用いられているものですが、地上では非常に貴重なものだそうです。コレットはよく言ってたんです。天界では貴重な薬草をぞんざいに扱いすぎだと」
コレットらしい発言だ、とハデスは内心思いながら柊の言葉の続きを待つ。
「コレットは貴重な薬草の扱いには気を遣っていました。大げさだと思うくらいに。だから、湿気に弱いこの薬草の瓶を密閉せず、開けっ放しにして出かけるなんてことはありえません」
「さっきも言ってたけど、コレットって結構きっちりしてるでしょ?急患だったとしてもやっぱりだまってどこかに行くってのは考えられないと思わない、兄上?」
ひょこっと横から出てきたゼウスが、柊に続ける。
「仕事なら尚更、柊に心配をかけないように書置きくらいしそうなもんでしょ?」
「確かに……」
「それに、コレットは加護が働くたびにハデス様の力を消費することを知って気にしていました。そんなコレットが1人で危険かもしれないところに赴くとは思えません」

柊の言葉に、ハデスは眼を見開く。
冥府でも天界でも進んで赴く無鉄砲なコレットだが、ハデスの加護のことを知って心配して冥府まで訪れていた。
柊の言うとおり、そんなコレットが自ら危険に飛び込むような真似をするとはハデスにも思えなかった。

「それでは、コレットは何者かに連れ去られたということか……」
「おそらくそうではないかと思います。顔見知りの誘いであったなら尚更、薬草をこのままにはしないでしょうから」
「……」
ハデスが施した加護は発動していないのでコレットが危険な目に遭ったというわけでもなさそうなのだが、コレットは姿を消した。おそらく、何者かに連れ去られて。
目を閉じて感覚を研ぎ澄ませてみるが、コレットの気配はない。
(せめて名を呼んでくれれば……居場所を特定することができるだろうが……)
「兄上ー。事情がわかったならコレットを探そうよー」
ゼウスが話しかけているが、ハデスはそれに答えずに何か手がかりはないものかと歩き回る。
そして入り口前に立った時……かすかな異臭を感じ取る。
「この香りは……」
「兄上?」
どこかで嗅いだことがある、とハデスは目をつぶり記憶をたどる。
睡眠作用がある薬だ、と思い当たると同時にハデスは入り口をくぐって外に出た。

「ちょっと!待ってよ兄上!どこに行くの!コレットを探しに行くなら僕も……」
外に出たハデスをゼウスが慌てて追いかけてきて手を引っ張ったために、ハデスはため息をついて立ち止まる。
「ケルベロスを呼ぶ」
「え?」
「入り口で異臭がした。おそらくコレットは眠らされて連れ去られた」
「えええっ?」
驚くゼウスの手を振り払い、ハデスは続ける。
「においの痕跡をたどるのならケルベロスの方が鼻が利く。コレットの捜索はそこからだ」


【03へ続く】




本当はもっとゼウスを動かしたいのだけれど、リミット優先なのでざっくりカット。

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