第2章 昭和の記録~奇跡その4~
<初めての彼女>
小学校時代、いくつもの奇跡によって
命を守られてきたナルハラ
中学生になった私に起こった奇跡とは・・・
これまでのように
命に関わるものではありませんでした
それは今でもハッキリと覚えています
まさかの、彼女がっっっ!!
ナルハラは、小学校の時から野球にバスケット
そしてサッカーとスポーツには自信がありました
女の子のグループとも遊んだりして
それなりに友達は多かったんです
そして、小学校低学年の頃・・・
「バレンタインデー」
なるものが、この世に現れました
もちろん当時は「義理チョコ」
なんて概念はありません
本命だけに贈る、真剣勝負の儀式です
「絶対、誰かからもらえるはず!」
そう信じて、バレンタインデーの朝は
登校するなり下駄箱を覗き込みました
......何もない
次は机の中
期待を込めて、そっと蓋を開けてみます
......何もない
ガックリ・・・
小学生ながら、肩を落としました
早朝から放課後まで、何度も下駄箱を確認して
蛍の光の音楽が流れるまで待ちました
でも結局、小学校を卒業するまで
1度ももらえませんでした
中学校になっても、1年生までは同じ
バレンタインデーは
ナルハラにとってただ苦い思い出を重ねる日でしか
ありませんでした
中学校では、1年生からテニス部に入りながら
陸上部にも掛け持ちし
2年生からはバレーボール部に所属しました
スポーツ少年ナルハラの面目躍如
というところでしょうか
そんな頃です
学年は同じでも違うクラスに
意識しだす女子が現れたのは・・・
中野美紀ちゃん(仮名)
男女ともに友達は多かったナルハラですが
いわゆる「両想い」で付き合うなんてことは
一切ありませんでした
それ以上に・・・美紀ちゃんは
学年どころか学校で1番人気があるくらいの
存在だったんです
しかも、すでに1つ上の学年の
こちらも学校で一番人気の
バスケット部の先輩と付き合っていました
学校で1番人気者同士のカップル・・・
ナルハラにとって
美紀ちゃんは雲の上の存在だったんです
美紀ちゃんは
ナルハラと同じクラスの女子に友達がいて
休み時間に、時々遊びに来たりしていました
何度か話したことはあるけれど、それだけ
それ以上の関係になれるなんて
夢の夢にも思っていませんでした
2年の冬
教室にストーブが出された頃のことです
丹後は雪が多く、寒さも厳しい土地柄
ストーブの周りには
いつも生徒たちが集まっていました
休み時間にクラスの女子たちと
ストーブを囲んで話していた時のこと
「ねえねえ、ナルハラは好きな子いるの?」
そんな質問が飛んできました
何も考えず、ナルハラは答えました
「美紀ちゃん、いいよね」
軽い気持ちでした
本気で付き合えるなんて
これっぽっちも思っていなかったから
女子たちは
「えーっ!」
「マジで!?」
とか、キャーキャー騒いでいましたが
ナルハラは特に気にも留めませんでした
そんな話をしてから、1週間ほど経った頃・・
昼の掃除時間が終わって、教室に戻ってくると
何やら教室がざわついていました
女子たちが
キャーキャー言いながら集まっています
「何事!?」
「どうしたの?」と聞くと・・・
「ナルハラ、おめでとーーー!!」
は?
な、な、なにが起こった???
「美紀ちゃん
ナルハラのこと好きなんだって!!」
なになになに??
状況がうまく呑み込めなかったけど
自分で顔がニヤけているのが分かりました
でも同時に
「女子にからかわれてるんじゃ?」
という疑念も湧いてきます
真偽が分からないまま
午後の授業が始まりました
集中なんて、できるはずがありません
そして・・・
1枚のメモが、前から机の上に回ってきました
『今日、美紀が一緒に帰ろうって言ってたから
自転車小屋のところで待ってて』
マジ???
心臓が、バクバクと音を立てました
もう、授業が終わる時間が永遠に感じられて
チラチラと時計を見ては
針の進みの遅さにため息をつきました
部活もあったので、急いで終わらせて
自転車小屋へ向かいました
美紀ちゃん......ホントに来るのか!?
待っている間、何度も深呼吸をしました
手に汗を握りしめて
落ち着かない気持ちを抑えようとしました
そして・・・
美紀ちゃんが、来ました
恥ずかしそうに、でも確かに
ナルハラの方へ歩いてきました
夕陽が彼女の後ろから差し込んでいて
逆光で眩しくて・・・
その光景は、今でもはっきりと覚えています
帰り道、何を話したかは覚えていません
ただ、一緒に歩いているという事実だけで
胸がいっぱいでした
それからは、毎日一緒に帰りました
日曜日はデートで、隣町へ映画を観に行ったり
公園に行ったり、散歩したり・・・
そして迎えた、人生初のバレンタインデー
美紀ちゃんは
手作りのチョコレートをくれました
型に取った
とても大きなハート型のチョコレート
「ありがとう・・・」
天にも昇るくらい嬉しくて嬉しくて・・
でも食べられませんでした
3ヶ月くらい、大切に部屋に保管していました
箱を半紙に包んで
引出しに入れて溶けないように。
たまに眺めては、ニヤニヤしていたものです
中学3年生からは、バンドも始めました
ギターを手に
仲間たちと音楽に没頭する日々
美紀ちゃんの当時の推しは
ベイシティローラーズ!!
その曲は出来ませんでしたが、
高校に入学するまで
本当に楽しい毎日を過ごしました
雲の上の存在の美紀ちゃんと
地を這うようなナルハラが付き合うなんて・・
これはもう
奇跡以外の何物でもありません
あの時、ストーブの前で何気なく言った
「美紀ちゃん、いいよね」という一言
それが、友達を通じて美紀ちゃんに伝わって
まさかの展開になったんです
想いは通じる
当時、そして今も・・・
この言葉を、ナルハラは信じています
口に出さなければ、何も始まらない
でも、素直に想いを口にすれば
奇跡が起こることもある
これは、ナルハラが中学時代に学んだ
人生の大切な教訓でした
次章では、高校時代
そして運命を変える「あの事故」へと
話は進んでいきます・・・