『認知症ケアの倫理』第5回読書会レポート② | 寺田真理子オフィシャルブログ

『認知症ケアの倫理』第5回読書会レポート②

2022年2月10日(木)に開催した『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』の第5回読書会のレポートのつづきです。

 

 

第5回読書会レポート①はこちらをご覧ください。

 

 

 

 

「ある人が介護を受けることになり、ケアマネに相談したところ、何をしたいかを訊かれたので、『映画が見たいと』答えたら、『それはできない』と言われてしまったそうだ。介護ヘルパーにはそのサービスを提供することができないという意味だったのだが、『自分は映画に行けない人間になってしまったのか』とショックを受けたという。自分でケアプランを立てることが可能だと知り、結局はそのように対応した。また、ケアマネと話がうまく通じないケースもある。相談をしたらグループホームの話をされて『家に住めなくなったのか』と驚いたという例もある。ケアマネとしては良かれと思ってサービスをどんどん紹介するのだが、相談者はそれでは何をやっていいかわからなくなり、混乱してしまう。このケースでは、ケアマネを変えられることを知ってケアマネを変えてもらった。『こういうものがある、ああいうものがある』と教えてくれるのは、専門家のほうからすれば『だから安心ですよ』と言う意味なのだろうが、家族を混乱させたり単に傷つけたりしているだけのことがある」

 

「専門家は日々似たようなケースと多く接しているため、『またこのパターンか。それならば、これとこれとこれ』という発想になってしまうのではないか。相談者にとっては人生で初めてのことなので、その辺の温度差が大きい」

 

「自分はあまり大きい判断について人には相談しないほうだ。大きい病気をしたことがないのでそれも原因かもしれないが、自分で決めてきたし、結局判断するのは自分自身だと思う。アドバイスをする人も、相手のために良かれと思ってしているケースは仕方ないので、うっとうしそうな人は上手に遠ざけてきた」

 

「自分は弟と仲は悪くなかったのだが、父親が認知症になったことがきっかけで関係に変化があった。自分はなるべく在宅で父親のことを看たかったのだが、昼夜逆転する生活で母が疲弊したため、300メートルほど先にあるグループホームに入れることになった。自分としては車椅子で連れて帰って家でご飯を食べさせることで罪滅ぼしをしたかったのだが、弟は預けたのだから連れて帰らなくていいと言う。これまでは弟と何かの問題について意見が食い違うことはなかったが、この件でぎくしゃくするようになった。これまでになく心を乱されたし、自分にもそういうことが起きるのだと知った。自分は父親のことが好きだし、弟もそうだと思っていたのに、どうしてそんなに冷たいことを言うのだろうと感じている。今自分が介護士をしているのは、在宅介護をしたいと考えてのことだ」