メスカルとテキーラ ~伝統と革新、そして動物愛護の視点~ | 目時裕美ブログ「Happy Drink Life」

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「テキーラは革新的で機械的、メスカルはハンドクラフト」――こうした比較はよく耳にしますが、実際のところ、どちらの業界も伝統と革新が共存しながら変化を続けています。

テキーラは、世界的な需要を支えるために高度な機械化と効率化を進めてきました。一方、メスカルは伝統的な手法やクラフトマンシップが強調される傾向があります。しかし、メスカルも近年では需要拡大に伴い変化しています。たとえば、タオナ(石臼)の機械化や、発酵・蒸留工程の合理化を導入する蒸留所も増えてきました。

これらの変化は「伝統を失う」ことではなく、持続可能性や衛生面への配慮、そして動物や人々への負担軽減を目指した前向きな取り組みと言えるでしょう。

動物愛護とタオナの現実
メスカルの伝統的な工程で、タオナを引く馬やロバが活躍する姿は、美しい文化の一面です。しかし、動物にとって過酷な労働環境があることも否めません。私自身、タオナを引く馬が鞭で叩かれる場面を目にしたことがあり、その光景はとても辛いものでした。また、酷使される動物の寿命が短いとも言われています。

一方で、動物たちを大切な「チームの一員」として愛情を持ってケアしている蒸留所もあります。こうした場所では、タオナを引く馬が十分に休養をとれる環境や健康管理を徹底しており、動物と人が共存する形で伝統を守り続けています。このような蒸留所の存在は、伝統と動物愛護の調和が可能であることを示しています。

伝統と革新のバランス
メスカルもテキーラも、伝統を大切にしながらも革新を受け入れることで進化を続けています。特に、動物を使わない機械化の取り組みは、動物福祉や衛生面での課題を解決する一つの道筋となっています。同時に、動物と共に働く伝統的な方法でも、その命を尊重し大切にする姿勢を持つことが重要です。

消費者として、背景にあるストーリーを知り、共感できる価値観を持つブランドや蒸留所を応援することが大切です。伝統、革新、動物愛護、そして持続可能性――これらの要素が共存できる未来を選び取ることで、業界全体をより良い方向へ導く力になるはずです。

メスカルもテキーラも、それぞれの進化の中で新しい課題に向き合っています。私たちも、その変化に目を向け、関わる一員であり続けたいですね。