3月20日の「メキシコ・テキーラの日」から3週間にわたって開催した「テキーラジャーナル2021」のリリースセミナーで、えぞ麦酒さんからメキシコ・トラスカラ州ナナカミルパで製造されるプルケ アシエンダ1881のプルケ缶3種類が新発売することを記念して、日本で初めてプルケのセミナーを開催していただきました。
日本語でプルケの情報は本当に少ないため、セミナーで学んだ情報を、こちらのブログで順番にプルケに解説をしていきたいと思います。
前編では、「プルケの歴史」について解説しましたが、今回は、「プルケの製法」についてご紹介したいと思います。
①アガベの栽培
プルケに使われるアガベの種類は、メスカルと同じように特に規制はなく、様々な種類のアガベから造られています。
多くのアガベはメスカルにも使われています。
代表的な4種類
プルケによく使われるので、Agave Puluquero(アガベプルケロ)とも呼ばれています。
アガベ・アトロビレンス:プルケに使われれる最も代表的なアガベで英語で「プルケアガベ」とも呼ばれる。
アガベ・アメリカーナ :とも言われる。葉っぱが長いのが特徴。
アガベ・サルミアナ:Green Giantとも言われる巨大なアガベ。
アガベ・マピサガ: 高さ2m×直径が5mにもなる巨大なアガベ。最長8mの高さに到達することもある 。
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このアガベの名前は初めて聞きました
※えぞ麦酒さんのセミナー資料より
アガベ畑:
Campo magueyero
テキーラと同じように、プルケに使われる成熟したアガベ(7年〜25年)から子株を採取し、株分けで育てます。
プルケのアガベ畑はCampo magueyeroやmagueyeras(複数形の場合)マゲエラスと呼ばれ、日照時間を長くするため高い木から離れたところにあります。
周りの木々に、土の栄養をとられてしまわないためでもあります。
プルケの場合、アガベの事を別名の「マゲイ」と呼ばれるとから、畑も同じようにアガベ畑ではなく、マゲイエラスと呼んでいるのだと思います。
メスカルの場合もマゲイと呼ばれることが多いので、地域や歴史によってアガベの呼び方も違うのかもしれません。
尚、アガベ=マゲイ=リュウゼツラン(竜舌蘭)=ナワトル語のメトルはすべて同じ意味になりますので、わかりやすく「アガベ」いう呼び方をしています。
平均6~15年の歳月をかけて、アガベを育成し成熟させます。
この畑では、成熟するまで育たなかったたり枯れてしまったアガベはそのまま放置し、土にかえることで畑の肥料となり、他のアガベのための良い栄養分となって成長を促すそうです。
②アガベの剪定&樹液の抽出
アガベが成熟すると、Tlachiquero(トラチケロ)と言われる職人がアガべの剪定の作業を行います。
トラチケロとは、スペイン語で「吸う人」を意味し、テキーラのヒマドール(収穫する人)、メスカルのコルタドール(カットする人・メスカルのアガベを収穫する人)と同じ意味で使われます。
ただ、トラチケロの場合は、熟成したアガベを見極めたり、樹液の抽出作業を行う人のことで、プルケ作りのためのアガベ(マゲイ)の育て方、生態を熟知した専門家を意味します。
ちなみに、成熟したアガベの見極め方は、成長した葉の量や、中心部の葉の色、葉の厚みなどから判断するそうです。
マゲエラスで栽培した沢山のアガベの中から、熟成したアガベを1つ1つ選び、アガベの葉の中心部分の花茎(キオテ)が伸びるて花が咲く前に切り取り、キオテが生えてくる部分を取り囲む、マゲイの卵とも言われる花梗 (または花柄)を切り取ります。
※えぞ麦酒さんのセミナー資料より
キオテが伸びて花が咲いてしまうと、そのアガベはプルケの元となる樹液を生成しなくなってしまいます。
一方で、この部分を切り取るのが早すぎると、プルケの元の樹液は味が薄くなったり質が落ちてしまうので、成熟したアガベを見極めるトラチケロの目はプルケ造りにおいて非常に大事になります。
まさに、経験からくる熟練の技。
そして、花梗を切り取る時に、アガベの中心に、Cajete(カへテ)と言われる30-40cmくらいの穴(ミゾ)を作ります。
この穴を、大きな石やアガベの葉で囲み、虫や動物が混入したりや天候(雨天)から守るようにします。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210409/23/tequila-metoki/e1/aa/j/o0496036114923877321.jpg?caw=800)
その後、カへテの内側の部分を削り、アガベの葉から中心の穴へ樹液が滴り落ちてくるようにします。
樹液は軽く濁りっていて粘度があり、アガベ由来の植物の香りがします。味わいはとても甘くて少し酸味があります。
③樹液の採集
カへテの内側を削ることによって集めた樹液を、トラチケロがひょうたんの一種を乾燥させて作るAcocote(アココテ)という道具を使って1日に2回、主に朝と夕方に採集します。
アココテには、底と上の部分に穴があいていて、上の穴から樹液を口で吸い込み、球形の部分に樹液をためてバケツなどに入れます。
この時の樹液を吸う作業から、トラチケロ(吸う人)という名前が付けられたのでしょう。
樹液を回収したあと、再びカへテの内側を削って次の採集のために樹液が溜まりやすいようにします。
成熟したアガベは、樹液を3~6ヶ月間出し続けます。樹液が出なくなった時に、そのアガベは寿命を迎えます。
1日に、4~6リットルの樹液が採れ、樹液を出し初めてから寿命を迎えるまで約1000Lの樹液を出すと言われています。
④種プルケの準備
プルケを造るためには、まず「種プルケ」を造ることからスタートします。
木桶やバケツにフレッシュな樹液を入れ、数週間そのまま放置し自然発酵で発酵させて「種プルケ」を造ります。
この種プルケがテキーラでいう酵母の働きをし、樹液を発酵させる役割にとなります。
⑤発酵
種プルケを木や牛の皮などで作られる発酵用の大きな桶に移し、採集したばかりのフレッシュな樹液をフィルタリングし、虫や混入物を取り除いてから足していきます。
樹液の質、季節、種プルケの状態によって異なりますが、だいたい3~6時間程度でプルケの発酵は終わります。
場合によっては3~12日かかることもあるそうですが、その場合は、トラチケロが発酵桶にアガベの葉の切れ端、ハーブ、アガベの根の部分などを入れて発酵を促進するなどして調整をします。
一般的に、短時間でプルケが出来上がるため、発酵が進むのが早く賞味期限も4~5日程と短くなります。
Curadoと呼ばれる何も加えていないそのままのプルケの状態で飲んだり、マンゴやパイナップル、イチゴやココナッツなどの果汁を入れてフレーバープルケとして飲む場合もあります。
プルケリアなどでは、野菜、ナッツ、スパイスなどをまぜたり、チリスパイスを加えてアレンジするところもあるそう。
@グアダラハラのプルケリア。様々なフレーバーのプルケが楽しめました。
製法がとてもシンプルで、アガベの樹液以外の副材料や添加物などを一切使っていないので、もともとのアガベの質や熟成度、良質なアガベの見極めがとても重要な役割となっています。
プルケの原始的な製法にちょっとびっくりしましたがテキーラやメスカルも、もともとこうして地酒としてその土地の方々が飲むために手間と時間をかけてつくっていたお酒なのだろうな‥と思うので、メキシコのお酒のルーツなのかもしれません。
ちなみに、私が覚えている限りですが、日本でプルケが話題になったのは、2011年4月に放送されたTBSの「世界遺産」だったと思います。
「あの白いお酒ってなに??」というところから沢山の方が興味を持ち、メキシコでしか飲めないということで希少価値が高まったのも注目されたポイントかもしれません。
私も、一度プルケを飲んでみたいと思い、2012年にメキシコを訪問した際、テキーラ村に向かう途中の露店で売っていたものを飲みました。
かなり発酵香が強くて・・・・・露店で常温に置かれていたのでもしかしたら、発酵が進んでいたかもしれず…その時は全然飲めませんでした
好みもあるのですが、最近では健康効果も注目されているようで、美容や健康のために飲む方も多いそうです。
プルケの健康・美容効果
糖分、アミノ酸、タンパク質、リン、カルシウム、鉄、亜鉛、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンCがなどが主に含まれ、かつて医者がプルケを薬として処方していたとも言われているほど、プルケの栄養価は高く体に良いものとされています。
腸内環境を整える - プルケの抗生作用のある微生物が存在し、腸内の有害なバクテリアの成長を防ぐ作用がある。また免疫力をあげる性質がある。
睡眠改善 - 睡眠を安定させたり、生体時計の調整を行ったりする作用があると言われるホルモン、メラトニンが含まれる。
栄養摂取 - 体内のタンパク質を作るアミノ酸である、トリプトファンやチロシンというアミノ酸が豊富に含まれている。
貧血予防 - 1リットルで7mgの鉄分が含まれる。(成人1日で必要な鉄分10mg)
コレステロール低減 - BSHというプルケに含まれている消化酵素がコレステロールを下げる働きがある。
その他利尿作用もあると言われています。
日本で飲めるようになった今、ぜひ一度プルケを飲んでみていただければ嬉しいです😆
発売してすぐ完売してしまいましたが、ココピニャが好み
セミナーでも3種類の飲み比べをしましたが、美味しくておかわりする人が続出でした。
最後の解説となる後編は、プルケ アシエンダ1881のプルケ缶についてご案内をさせていただきたいと思います!
→前編・プルケの歴史