テキーラにテロワールはありません!よくあるテキーラの間違った情報について | 目時裕美ブログ「Happy Drink Life」

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この数日、「テキーラの日」にちなんで沢山のテキーラの情報を目にする機会があり、前からずっと気になっている事を改めて。

テキーラの味は、原材料のアガベ本来の味わいはもちろん、加熱や搾方法、使用する酵母を含む発酵工程、蒸留方法など、製造過程の様々な要素により決まります。そのため、ワインと同じような意味でのテロワールはテキーラにはなく、CRT (テキーラ規制委員会)の法律にも明記されていません。

アガベには、ハイランド(ロスアルトス地区)やローランド(バジェス地方)といった土壌の違いによる味わいの一定の傾向はありますが、最近では蒸留所がある地区だけではなく様々なエリアのアガベを、糖度の基準で仕入れてテキーラを製造したり、アメリカで人気の女性をターゲットとした甘めのブランコをつくる傾向があったり、アガベの高騰化により、ハリスコ州以外のアガベを使用したり…など、蒸留所がある場所とアガベの味わいの特徴とが同じではありません。

例えば、テキーラ地区に蒸留所があれば、みんな火山灰地質の土壌でつくられたアガベ=辛苦い=テキーラ地区のテロワール、とは言えないという事です。

また、同じ蒸留所で作っていても、ブランドごとにこだわりがあり、テキーラのボトルデザインが様々なように、味わいもブランドごとに特徴があります。
もしブランドが、歴史や風土を大切にした場合は、味わいの傾向と場所がイコールになる時もありますが、それもそのブランドの特徴であり、「テロワール」ではありません。

逆に、シングルエステート(単一農園で栽培したアガベからつくられたもの)のテキーラは、毎年気候や環境が変化する中で、限られた場所で栽培されたアガベのみを使用し、その土地の風土を生かしたテキーラとして、ビンテージがあり、年度ごとの違いを楽しむことができます。

昨年末にCRTを訪問して、テキーラの勉強もしっかりやってきました。この時の経験は大きいですね。

昨年書いたコラムですが、よかったら記事を読んでいただき、シングルエステートのテキーラの魅力を知っていただけたら嬉しいです。
テキーラの味わいはとても奥深く、テロワールではなくブランドごとの特徴として語られるようになると嬉しいですね。