メキシコはもちろん、アメリカやカナダ、ヨーロッパを中心に、話題になっているメキシコのアガベスピリッツメスカル。
日本ではまだまだ情報が少ないメスカルですが、メスカルの歴史は1万年前に遡り、メキシコの飲み物のルーツとも言えます
メスカルの語源はナワトゥル語でMexcalli(調理したマゲイ)ですが、神話ではマゲイ(アガベ)に雷が落ちたことから誕生したため、神様の飲み物とも呼ばれているそうです。
その後、植民地時代にはスペイン人によってマゲイは「驚異の木」として、薬や衣類・建築の材料として活用されており、16世紀に蒸留技術が伝わり、お酒として親しまれるようになります。
現在9州963ヶ所でメスカルが作られていますが、テキーラを厳しく管理しているCRT(テキーラ規制委員会)のようにメスカルにも同じような組織CRM(メスカル規制委員会)があり、原産地呼称制度が採用され、厳しく管理されたものだけが「メスカル」と呼ばれています。
現在原産地として認められているのはオアハカ、ドゥランゴ、ゲレロ、ミチョアカン、プエブラ、サン・ルイス・ポトシ、タマウリパス、サカテカスの9つ。今後、モレロスやアグアスカリエンテスが加わる予定とのこと。
ちなみに、テキーラの生産地であるハリスコ州はメスカルの原産地呼称に入っていないため「メスカル」と名乗ることができません。
世界的にメスカルブームが来たと言われていますが、生産量は2017年で3985万ℓ(2011年は980万ℓ)とまだ少なく、輸入量は2801万ℓ(2011年は627万ℓ)の推移となり、数字的にはまだまだ少ないものの、この6年間で驚異的な伸びを見せています
ブランド数も60カ国で201ブランドですが、まだまだこれから増えていくことでしょう。
その中でも、海外メディアで“5 Best New Mezcals”に選ばれるなど、注目のメスカルが今回紹介する「デルンベス」です。
デルンベスは、2018年3月に日本に初上陸したばかりのブランドで、8月にはブランドのプロモーターとして活躍する友人ウリセス・ゴンザレスが日本に初来日して、ウェルカムイベントなどを企画させていただきました。

2018年現在、日本では25種類以上のブランドが販売になり、来年に向けて益々ブランド数は増える見込みとなっています。
メキシコシティに行くと、続々と新しいメスカル専門バーがオープンし、テキーラよりメスカルの品揃えが多いお店があったり、カクテルメニューに普通にメスカルカクテルが何種類もラインナップされていたり、メスカルの勢いを感じる機会も増えてきました。
グアダラハラにも、メスカルしか取り扱わないクラブもあったり勢いを感じます。
日本では、テキーラの普及もこれから…といったところですが、同じメキシコ原産のアガベスピリッツとして、メスカルの魅力も一緒に伝えていけるようになればと思います。
ちなみに、ウリセスとは5年近い付き合いとなり、テキーラを飲みながらグアダラハラ内ですが、沢山の旅をしました
セルジオと一緒にバーホッピング。
テキーラデルセニョール蒸溜所。
などなど、グアダラハラに行く度に一緒に様々なテキーラ蒸留所を訪問したり、バーやレストランに連れて行ってもらったり、テキーラの生産者を紹介していただいたり・・時々ボディーガードとして夜中のクラブ巡りに付き合ってもらったり本当にお感謝しきれないくらいお世話になっています。

メスカル生産の中心地であるオアハカには59種類のアガベが生息しています。
アメリカ大陸には約200種類以上のアガベがありますが、その75%にあたる150種類がメキシコで生育しています。
メスカルにメインで使用されているアガベ・エスパディンは、ほとんどがオアハカで育てられており、唯一畑で栽培されています。
野生種よりも短期間で成熟するため、育てやすい事が一番の理由になっています。
先日開催したCRMのサポートによるAGAVE LOVEのメスカルセミナーでも説明がありましたが、メスカルにも3つのカテゴリーがあり、メスカルが作られた当初から変わらない伝統的な製法で作られる「ANCESTRAL」、クラフト感を残しつつ、安定供給のできる日本にも輸入されているメスカルブランドのメインとなる「ARTESANAL」、そして最新技術で工業的に大量生産される「MAZCAL」に分けられます。
日本語だと、伝統製法・手造り製法・工業製法と呼ばれます。
伝統製法では、地中に穴を掘ってアガベ(マゲイ)を蒸し焼きにして、手作業で加熱したアガベを粉砕し、動物の皮で発酵し、素焼きの瓶で蒸留するという何とも手間がかかった作り方をされます。
手造り製法の場合は、タオナ(石臼)を使ってアガベを搾汁し、木桶で発酵させ、銅製の窯で蒸留するところがほとんど。
工業製法は、テキーラの一般的な製法に近く、圧力釜で蒸したアガベをシュレッダーで絞汁し、ステンレスタンクで発酵させ、蒸留器を使って蒸留します。
好みや飲み方にもよるので、どの製法がいいということではありませんが、自分の好きなブランドがどんな作り方をしているか、カテゴリーによって見分けることは可能です。
デルンベスについて解説すると、6年前に、テキーラ「ドンフラノ」のオーナーでありウリセスと共通の友人のセルヒオ・メンドーサ氏と、AGAVERIAのコンセプトをメキシコでつくったエステバン(ライシージャ「ラ・ベネノサ」のオーナー)と、私はまだお会いしていないのですが出資者の1人イヴァンの3人が集まり「今までにない新しいメスカルブランドをつくりたい!」という話になったことがスタートでした。
彼らがこのブランドの拠点として選んだのはハリスコ州のグアダラハラ。まさに、今回のシークレットバーがある場所です。
テキーラメインの場所で、あえてメスカルのブランドをつくることで「アガベの多様性や、テキーラより歴史が古い伝統的なメキシコのスピリッツであるメスカルをもっと知ってもらいたい」という思いが込められています。
今回サプライズゲストとして、デルンベスのプロジェクトメンバーでもある、ドンフラノのオーナーセルジオもシークレットバーに駆けつけてくれました
デルンベスには「自然災害」というマイナスのイメージとなる意味もあります。
ネガティブなワードなので、なぜ??と思う方も多いと思うのですが、自然災害は人の力が及ばない、自然の力で既存のものを壊して新しいものを作り上げるような、「新しいスタート」という意味も込められていて、実はポジティブな言葉としても使われています。
今までにないメスカルブランドをつくりたかったので、この言葉の意味が相応しいと思って名づけられました。
「メスカルを飲みながらメキシコを巡る旅を楽しむ」ということをブランドのコンセプトに掲げているので、メキシコの違った州で、違う種類のアガベをベースにつくられていて、現在5銘柄中オアハカ州とサンルイスポトシ州のものが日本で発売されおり、2019年はさらに新しい州のもの「ドゥランゴと「ミチョアカン」が発売開始する予定となっています。
ちょうど、日本に出荷される前のボックスをお店で発見ワクワクしますね。
デルンベスは、つくられている州によってラベルのカラーが違うのですが、現在日本に輸入されている緑のラベルの「サンルイスポトシ」は、チャルカスという砂漠のように乾燥した地域の近くで造られています。
このエリア・環境でしか育たないサルミアナというアガベを原料として使っていて、なんと12〜13年栽培されたものを収穫して、タオナ(石臼)をつかった伝統的な製法でアガベジュースを搾汁しています。発酵には石のタンクを使用し、酵母を使用せずに自然発酵しています。
メスカルはスモーキーなイメージが強いですが(アガベを加熱する際木を燃やして煙から香りが付くため)サンルイスポトシでは木を使わずに、乾燥させたキオーテ(アガベの花を咲かせる幹部分)を使って加熱しているので、スモーキーさがあまりないメスカルです。
一方赤いラベルの「オアハカ」はメスカルの生産地として有名なサンティアゴ・マタトランから20分くらいの場所でつくられています。
メスカルの材料として一番有名なアガベの種類であるエスパディンを70%、野生種のアガベ・トバラを30%使用し、両方をミックスしています。
メスカルの基本的な製法である、約5mのタテマドにアガベを積んで、オーク(木)と一緒に蒸し焼きにすることで、スモーキーさのあるメスカルらしい香りになっています。
一番の特徴は、木桶で発酵する時にに、アガベの醸造酒プルケを4%程度加えている事です。プルケはどぶろくや生まっこりのような発酵感のあるお酒で、最近若者を中心にフルーツなどとミックスして提供さてるプルケリアなども流行っています。
テキーラの値段の高騰化や、人気による品薄状態が続いた影響もあり、世界的にメスカルのブームは続くと言われています。
また、メスカル以外のアガベスピリッツであるライシージャ(ハリスコ州でアガベアスル以外のアガベでつくられるアガベスピリッツ)やバカノラ(ソノラ州のエスパディン系のパシフィカでつくられるアガベスピリッツ)や、ソトル(チワワ州・ドゥランゴ州・コアウイラ州原産のキジカクシ科のダシリリオンからつくられた蒸留酒)など、メキシコ原産のその他のスピリッツも注目されているそうで、世界中から問い合わせが殺到しているそう。
メキシコ人はテキーラに対してマイナスイメージがないので、スタートが日本とは違い、テキーラは人々の生活に根付いています。
より面白いもの、新しいものを求める方には、テキーラは洗練され過ぎていてちょっともの足りなさを感じ、メスカルやその他のスピリッツに興味を持つ傾向があるそうです。
私は、メスカル初心者でまだまだ勉強が必要なのですが、身近な方が手がけているブランドというだけで親近感もあり応援したくなるので、「デルンベス」は自分の中でも特別なメスカルとして、これからも沢山の方に飲んでいただけるように宣伝していきたいと思います。