「あ~、あっちぃ。」
カンカン照りの太陽に、珍しく健康的な俺たち。
雅紀に続いて二宮と潤もやってきて、駅からそう遠くないテニスコートに向かった。
潤は何度か利用してるようで(そりゃ、誘ったの潤だからね)、
初心者の俺らに、丁寧にレクチャーしてくれて(それこそロッカーの使い方から!)。
打ち返せるようになると、二人ずつに分かれてゲーム形式の練習。
5人いるから、一人は休めてちょうどいい。
最初に休んだのは二宮。
ジャンケンでサクサクっと決まった。
「さすが大野、上手いね!」
潤がやたらと大野を褒める。
それもニコニコの可愛いスマイル付き。
「俺は俺は?」
雅紀が派手なアクションでボールを打ち返す。
「雅紀、なんだか打ち方おかしくない?」
「そうかなぁ?」
雅紀が首を振りながら素振りする。
素振りはキレイなフォームなのに、ボールを打つとむちゃくちゃなのはなんでだろ?
そのむちゃくちゃなフォームが大野のツボらしく、大野が雅紀を見て楽しそうに笑う。
「相葉君、すごい!」
あ~あ、そんなに楽しそうな顔しちゃって。
ふにゃってしてくしゅってして。
そんな顔見せたら、雅紀だって嬉しくなっちゃうから!
「え、そう?こんな感じ?」
大野が返したボールを、また雅紀が打ち返す。
あ、ちなみに俺と雅紀、大野と潤がチームね。
打ち返せてるのが奇跡みたいなフォームなんだけど、必ず返せる雅紀はすごい。
そのボールを今度は潤がキレイに打ち返して。
それを俺も……あれ?
キレイなフォームのはずの俺のラケットには、ボールは当たらず。
「翔ちゃんっ!」
雅紀の責めるような声に、口を尖らせる俺。
俺だって、打ち返せると思ったんだよ!
急いでボールを拾いに行って、コートの中に戻る。
まだサーブが打てるレベルじゃない。
「ちゃんとボール見て!」
潤がラケットを叩きながら叫ぶ。
お前はコーチか!
「んふふ、だいじょぶだいじょぶ。落ち着いてボール見れば当たるよ~。」
大野が優しく笑ってくれる。
うう、味方になってくれるのは大野だけだよ。
「じゃ、次落としたら、二宮と交代ね。」
潤がチラッと二宮を見て、俺を見る。
あ、交代は俺だと思ってる?
もうカッコ悪いとこ見せないからな!
と思ったけど……結局落したのは俺で、二宮と交代。
代わったら、ラリーが続いで潤と雅紀に散々言われたけど、
雅紀と俺が交代してもそこそこ続いて。
慣れりゃこんなもんよ!
上手い具合に順グリに交代していって、2時間もやればみんなすっかりクタクタ。
特に雅紀は一つ一つの動きが大きいから!
俺と雅紀は汗ダクダク。
「翔ちゃん、すげぇ汗!」
「お前もなっ。」
みんなで並んでロッカールームの奥のシャワー室に向かう。
一応仕切りはあるけど、男同士。
雅紀はさっさとスッポンポンになってシャワールームに駆け込む。
子供かっ!
「雅紀っ!」
「なに~?」
振り返った雅紀の中心はブランブラン。
タオルで隠せっ!
「タオル持ってかないの?」
「え~、持ってくと濡れちゃうじゃん?いいよ、男同士だし!」
そう、男同士。
でも恋する俺は恋する相手と一緒のシャワーにちょっとドキドキしてる。
見ていいのか、いけないのか。
イケナイ心が顔を出す。
チラッと大野を見ると、大野も隠すことなく上半身は裸。
細いけど、キレイな筋肉。
運動してる風じゃないんだけどな。
体育見てもテニス見ても、あんな何もできない王子様みたいな見た目で
運動もできんだよな。
サクサクとズボンを脱ぐ大野を見ながら俺も脱ぐ。
パンツは中で脱ぐか。
やっぱ恥ずかしいじゃん?
と、大野がパンツに手を掛ける。
ええっ?
大野も雅紀スタイル?
脱いでから中入るパターン?
ドキドキしてる俺をよそに、パンツに手を掛けたまま大野の動きが止まってる。
何見てる?
大野が見てるものが気になって振り返ると、バタバタと入って来た男が、
あっという間にシャワールームに入って行く。
シャワールームは全部で5つ。
雅紀と二宮が先に入ってて、潤も入ろうとしてる。
と言うことは……。
「櫻井君、先入っていいよ。」
大野がニコッと笑って、パンツから手を離す。
大野のパンツはピッタリフィットのボクサータイプ。
もちろん、真ん中はモコッと……。
バ、バカっ!
どこ見てんだよ!
「櫻井君?」
「ん?あ、あ~、いいよ、大野が先入って。」
「そんな汗掻いてて?」
大野がふにゃふにゃ笑う。
「え、ほんとほんと、先入っていいから。」
「いいよー。大丈夫だから、櫻井君入って。」
しっかり筋肉のついたふくらはぎをポリポリ掻く大野まで、
ナチュラルでキラキラして見えるのは恋のなせる業?
それとも王子様効果?
大野がチラッと俺の脛を見る。
「櫻井君、足、綺麗だね。」
「え、そんなことないよ。」
自慢じゃないが、俺の足は細くてわりとキレイ。
すね毛も少な目で、お袋のお墨付き。
「さっさと入っちゃいなよ?次、カフェ行くんだから。」
潤がシャワールームの中から怒鳴る。
「わかってる!」
「一緒にはいればいいじゃん!男同士なんだし!」
雅紀もシャワーに負けじと怒鳴る。
俺と大野は顔を見合わせる。
……一緒に入る?
あの狭いシャワールームに?
「あ、俺と入る~?」
雅紀の声にドキッとする。
雅紀と大野が一緒に?
それは絶対あり得ない!
「ほら、さっさと入っちゃって!」
俺は大野の腕を掴んで空いてるシャワールームに押し込む。
「え?でも……。」
「いいから!俺は先にあがったとこに、さっと入るから大丈夫。」
「じゃ、一緒に浴びる?」
大野がニコッと笑って罪なことを言う。
「そ、そ、それは絶対無理っ!」
バンッと扉を閉め大野に背を向ける。
そんなこと、できるわけない!