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松潤は、いつでも俺の話を、ゆっくり聞いてくれる。
俺の方が、年上なのに、どこか、甘えてしまうんだ。
ふと、松潤の手が伸びて、俺の頬に触れた。
え?
これって、もしかしたら、もしかするの?
前にも、似たような事があった。
ある時、旅行に行きたいけど、色々と面倒だって話をマネージャーとしていたら、松潤が会話に加わった。
「それ、俺も行きたい。一緒に行っていい?」
それで、一緒に行ったんだ。
ううん、一緒に行ったというより、連れてってもらったが正しい。
細かく調べてくれて、支払いとかも全部してくれた。
あの日、旅行先のホテルの俺の部屋で二人で飲んでて、すっかり酔ってしまった。
ふにゃふにゃの俺を抱えて、ベッドに運んでくれたんだ。
嬉しくなって、松潤の首に腕をまわして、抱きついたら、動きが止まったんだ。
「あれ?まつじゅん?」
体を離した松潤は、何かを言いかけて、首を振って、部屋を出ていった。
次の日、松潤がホテルの支払いをしてくれてた時、背の高い外国人に話しかけられた。
何を言ってるのか、まったくわからなくて、適当に笑ってたら、がっしりと肩を抱かれて、歩き出されてしまった。
その力が、あまりにも強くて、振り払う事ができなかったんだけど、松潤がものすごい顔をして飛んできた。
「あんた、何してんだよ。
リーダーをどうするつもりだ!」
松潤は、ずっと、日本語だったけど、あまりの剣幕に、俺は解放された。
「ごめん。ありがとう。」
お礼を言うと、松潤が抱きしめてきて、松潤が少し、震えてるのがわかった。
しばらくして、体を離した松潤は、俺の右肩に左手を置いて、俺の目を見て、言ったんだ。
「もし、リーダーに何かあった、俺。
俺は。」
松潤の右手が俺の頬に触れて、見つめる瞳が揺れてた。
「え?」
「いや、いいんだ。行こう。」
あの時、何を言おうとしたのかな?
もしかして。
今、目の前にいる松潤は、俺の顔をじっと見つめている。
ジュニアの頃は、小さくて、可愛かった。
今では、俺よりも体も大きくなって、精神的にも俺よりしっかりしてて。
「お菓子が付いてたよ。」
笑いながら、松潤の手が離れた。
恥ずかしい。
何、想像してたんだ、俺。
俺は、もう、おじさんだし、松潤は男で、もしも、松潤が男でもOKな人だとしても、俺なんか選ばないだろう。
でも、松潤のまなざしは優しくて、勘違いしたくなる。
長い睫毛や、口の近くにあるホクロが色っぽくて、目が離せない。
キス、上手なんだろうな。
ああ、また、何を想像してたんだよ、俺。
恥ずかしくなって、うつむいてしまった。
「ねぇ、リーダー?」
松潤の手が、再び、俺の頬に。
Writing by J+S=いちご Special Thanks!