フライミヤマクワガタ (テングミヤマ)(WILD ) Lucanus fryi | 昆虫漂流記

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近年は、昆虫だけにとらわれず、自然全体から、
観察する眼を持ちたいと思いますのでよろしくお願いします。

フライミヤマクワガタ
(テングミヤマクワガタ)
Lucanus fryi
Fang Chiang Mai North Thailand
(タイ北部にあるチェンマイの近くのファンという町)
2003年に採集された個体

本種はインド北部、ミャンマー北部からタイ北部、中国雲南省、チベット南部に生息している。
本種の原名亜種のホロタイプ♂は、ミヤンマ―中部のマンダレーの北に位置する「 Ruby Mines 」から1911年に記載されイギリス、ロンドン自然史博物館に保管されています。

尚、パラタイプはフランス、パリの国立自然史博物館に保存されています。
(ホロタイプ=新種、新亜種の記載にあたり、基準にされる為に世の中で1点(昆虫では1匹)だけ選ばれる標本。ただ単に”type"や”the type”として簡略化される事もあります。)
(パラタイプ=ホロタイプが指定された場合に、記載者がホロタイプに指定の際に使用された1点以外の、残りの全標本。)

 

原名亜種のタイプ標本はヨーロッパの博物館に保管されていますが、月刊むし2001年4月号No362クワガタ特集号に「ミヤマクワガタ属のタイプ標本(1)]として、現在は九州大学のクワガタムシ研究の権威である荒谷邦雄教授が今から24年前の2000年にヨーロッパ各地の博物館を訪問し撮影されて来られているので、古い雑誌に埋もれているのは勿体ない写真なので年月が経過した現在に紹介させて頂きたいと思います。(この文章を持って敬意を表し参照元とさせて頂きます)

上の写真はフランス、パリの国立博物館に保存されてるパラタイプ標本になります。(右下のラベルにPARATYPEの表示があります)

上写真の右下のラベルには「HOLOTYPE ♂ in Gott.British Muzeum」がありホロタイプがイギリス王立博物館(現在のロンドン自然史博物館)に保存されている事まで記載があります。

 

ちなみにこの標本を荒谷教授が「一見するとPlanetやArrow, Didierらの図で我々が知るL.fryiとは大アゴの内歯の状態などが違って見える」と書かれていますが、私も各種の図鑑をひっくり返してフライミヤマの小さな個体と比べてみると内歯の状態が違う事に気がつきました。(PlanetやArrowはクワガタの種類, Didierは記載した人物)

この24年間の間にミヤンマ―中部のマンダレーの北に位置する「 Ruby Mines 」から記述されたフライミヤマは、現在では分類が見直されたのかは不明です。


本種は以前からインド北部ネパールに生息するネパールミヤマと呼ばれていたLucanus villosus(ヴィロススミヤマ)のタイに生息する代置種と未確定ながらに考えられていましたが、現在はLucanus villosus(ヴィロススミヤマ)グループには含まれますが別種と位置づけられています。

ちなみにネパールミヤマクワガタの異名がヴィロススミヤマクワガタと別名がある様に、本種もフライミヤマクワガタと呼ばれる以前は、テングミヤマクワガタと和名で呼ばれていた経緯があります。
現在、フライミヤマクワガタは、インド北部の西カメン地区アルナーチャル・プラデーシュ州のボンディラ (Arunachal Pradesh west Kameng)標高2650メートル(平均気温約0℃~20℃)で採集されたタイプ産地の個体群をssp.schepanskii(亜種シェパンスキ)と分類される記述や亜種シェパンスキはフライミヤマの個体差の範囲で他の名前が命名されているが同じ種類(シノニム)とする考え方が示されています。

(ssp.は亜種を意味する略語です)

(シノニムは同一とみなされる種や属などに複数の名前がある場合に、それぞれの名前を示しています。)


今回取り上げた標本は、原名亜種にあたり、産地はタイ北部にあるチェンマイの近くに位置するFang(ファン)という町の周辺個体ですが、この辺りはクワガタだけでなく蝶などの昆虫採集や、昆虫販売を生業としている特徴ある地域です。
タイ北部の現地ではフライミヤマの出現は4月末から6月頃で標高2000メートル程の雑木林に生息しています。