オオセンチコガネ (ルリセンチコガネ、ミドリセンチコガネ) 奈良県奈良市 2017年09月27日 | 昆虫漂流記

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オオセンチコガネ

(ルリセンチコガネ、ミドリセンチコガネ) 

奈良県奈良市

2017年09月27日

 

国内に生息するセンチコガネと名前が付く種は 

「アカマダラセンチコガネ、アサヒナセンチコガネ、アサヒナアカマダラセンチコガネ、アマミトビイロセンチコガネ、イシガキトビイロセンチコガネ、、オオシマセンチコガネ、オオセンチコガネ、オキナワアカマダラセンチコガネ、キボシセンチコガネ、センチコガネ、ムネアカセンチコガネ」など、各種の種類にセンチコガネ(アイウエオ順)と名前がついていますが、これらは糞虫としてセンチコガネの仮和名でつけられているだけで、全てが別の種類です。

 

日本国内で普通に観察できるセンチコガネ(Geotrupes)類は、

センチコガネ、オオセンチコガネ、(Geotrupesにはオオシマセンチコガネも含まれます)が生息していますが、本記事のオオセンチコガネにおいては屋久島に生息がみられる個体群については、ヤクルリセンチコガネと亜種が分類され、

日本本土に広く分布するオオセンチコガネについては、色彩バリエーションとして、ルリセンチコガネや、ミドリセンチコガネなどと、色彩から名付けられている同種とされた地域個体差とされています。

 

日本各地で見られる個体色彩は

  • 全国的に広く見られる、赤胴色や金赤色に輝く個体(生息地で軽微な差があります)。
  • 鈴鹿山地から京都府南部周辺までを生息域とする群は鮮緑色に輝きミドリセンチコガネ。
  • 紀伊半島を生息地とする個体群は藍色に輝きルリセンチコガネ。

と一般的に呼ばれています。
今回訪れた、奈良県の某公園(あまりにも生息地が有名なので明かしますが奈良公園です。ルリセンチコガネは採集禁止になっています)は地域的にミドリセンチコガネとルリセンチコガネの、2種類の色彩が見られる場所になり、中間色も見る事ができます。


オオセンチコガネ、の発生は、夏季にはじまりますが、今回の訪問では、すでに死んだ個体を多く見かけ、例年のように生きた個体を多く見る事が出来ませんでした(当日の悪天候で見られなかった可能性もあります。)
またオオセンチコガネは動物の死骸や糞を食べる事から、各地で増加傾向の鹿が見られる地域には生息地拡大が多く見られるようになっているようです。

 

参考までに九州の阿蘇地方から宮崎にかけての地域には、レインボーセンチコガネと言われた「センチコガネ」の多色の色彩バリエーションのオオセンチコガネとは違った個体群がみられます。

 

今回訪れた公園は言わずとしれた、神使とされる神鹿が各場所で見られ、オオセンチコガネが何処でも観察できますが、やはり、鹿が沢山見られるポイントを探すのが、観察のコツです。
しかし鹿が集まる場所は観光客が多いので注目の的になる事は必然的で、しゃがみ込んで鹿の糞を眺めていると変質者とも勘違いされますよ。

 

参考までに甲虫屋の先輩達からの話では、半世紀前はオオセンチコガネは少なく、センチコガネの個体数が多かったと聞いてます。
テレビの情報では奈良公園周辺では、昔と比べ鹿の頭数が増加し、近隣で鹿害が問題視されていると以前に見た事がありますので、個体数の増加がセンチコガネに影響するよりもオオセンチコガネの個体数に影響しているのかもしれませんね。

 

記事前文でも記載しましたが、注意しておきたいのは、公園ではオオセンチコガネ(ルリセンチコガネ)は採集禁止対象になっている事です。

 

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「奈良県立都市公園条例施行規則」
(禁止行為)
第四条 公園においては、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
  五 鳥獣類、魚類、指定された昆こん虫類等を捕獲し、又は殺傷すること。
(昭三五条例二〇・昭五七条例二〇・平一六条例一五・一部改正)

第五条 条例第四条第一項第五号の昆虫類は、次のとおりとする。るうみすしじみ、やまとにしき、まつむし、すずむし、だいぶつほたる、ひめはるぜみ、るりせんちこがね、もりあおがえる、かすみさんしよううお
(昭四八規則五八・昭五九規則四四・一部改正、平一七規則七・旧第四条繰下)

 

採集可能なのか?本当はどうなのか?うわさ話で悩んでおられる方の為に詳しく書かれた条例文へのリンクをかけておきますので参考にして下さい。

(2023年現在、リンク先にしていた「奈良県立都市公園条例施行規則」はネット上から消去されていますので上に記載した条文を参考にして下さい」

 

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こちらの公園では、上記で紹介しました「奈良県立都市公園条例施行規則」の法律によって昭和48年より採集が禁止されていますので、採集行為を見つけられると違反の対象になります。

さらに最近は公園内の樹木林地域にも立ち入り禁止の立て看板がありますが、むやみに立ち入らなくても鹿が集まっている場所に足を運べば観察できますので、お寺を参拝しながら下を向いて歩く事でルリセンチコガネは見つける事は出来ます。

(せっかくの奈良観光で鹿の糞しか見てなかった事では残念ですからね。)


今回は撮影目的で、公園内に行きましたので、公園管理関係者と工事関係者が観察場所の周辺におられましたので、不審者等との誤解を避けるため声をかけました。
工事関係者でも「あの光る虫ね」とルリセンチコガネの認識度は高いようです。


なお公園以外でも、鹿は広い地域で見られますので採集禁止場所から少し離れれば採集が可能です。

 

それでは写真から紹介していきましょう。

 

最初に見つけたルリセンチコガネ
奈良県奈良市奈良公園 2017年09月27日撮影

 

上写真と同一個体

奈良県奈良市奈良公園 2017年09月27日撮影

 

落ちていたミドリセンチコガネの上翅(こんな状態の物があちこち落ちていました)

奈良県奈良市奈良公園 2017年09月27日撮影

 

写真写りでルリセンチコガネに見えますが、中間型でした。

奈良県奈良市奈良公園 2017年09月27日撮影

 

上写真と同一個体
奈良県奈良市奈良公園 2017年09月27日撮影

 

こちらは別個体の小型の中間型

奈良県奈良市奈良公園 2017年09月27日撮影

 

ルリセンチコガネより漆黒に輝く漆黒ルリ色型

奈良県奈良市奈良公園 2017年09月27日撮影

 

ミドリセンチコガネ

奈良県奈良市奈良公園 2017年09月27日撮影

 

大型のルリセンチコガネ

奈良県奈良市奈良公園 2017年09月27日撮影

 

別の産地では赤胴色の個体(全国的一般型)
兵庫県姫路市 2017年09月24日撮影

 

上写真と同一個体
兵庫県姫路市 2017年09月24日撮影


野外での撮影では光の当たり方によって色彩差異がの違いが表現が難しいので標本にて並べて紹介しておきます。

オオセンチコガネの色彩変異

 

こちらはセンチコガネです。兵庫県産

 

 

糞虫つながりにおいて綺麗な糞虫から
海外(南米)のミドリツヤダイコクコガネも手元にあるので紹介しておきます。

エクアドル産 ミドリツヤダイコクコガネ

サイズは日本のカナブンの大きさです。

 

糞虫でなかったなら、人気昆虫の座では

形、色彩においてカブトムシに引けをとくこともなかったでしょうね。

「ミドリのカブトムシ」なんていませんからね!!

 


さらに「糞虫」つながりでスカラベについて
スカラベと言われて何?? 
糞虫と聞けば、一番にフンコロガシを思い浮かべますがそれが「スカラベ」です。
フランスのファーブル昆虫記に書かれた有名な「フンコロガシ(タマオシコガネ)」の事です。
実際の種類はヒジリタマオシコガネと云われているそうです。

 


赤松の郷昆虫文化館所蔵。撮影許可あります。

 

日本国内では糞虫は何種類も生息するのですが、それらの多くは主に糞を餌とするだけで転がすわけではありません。

大型のフンコロガシの仲間は生息していなく、小型のマメダルマコガネがこの近似種として生息しているとの事です。
残念ながら某公園にて、軽く探して見ましたが見つける事は出来ませんでした。
やはりシャベルなので糞をひっくり返して真剣に糞と対峙しなければ見つかりませんよね?

 

参考までにこちらも糞虫の一種。大きさは約10㎜

兵庫県産 カドマルエンマコガネ。

 

参考までにこちらも糞虫の一種。 大きさは約10㎜

兵庫県産 コブマルエンマコガネ。
これらエンマコガネの糞虫は、このような機会でしか紹介できないと考え列記しております。

 

それならついでに少しレアな国産種も~!

ムネアカセンチコガネ

 

ここからは「人とスカラベ」の話になります。
古代エジプトにおいてはスカラベは、崇拝の対象とされていました。
スカラベは次の事柄から太陽神ケプリと同一化されていました。

  • 太陽と同じ球体をスカラベの糞球と重ねて信仰の対象に考えられていました。
  • 太陽の日の出を、地面から出てくるスカラベの姿と同じように考えられる天地創造説。
  • 太陽が沈み、翌日に陽が登る動きを地面から這い出てくるスカラベの姿を重ねて、死後の復活をミイラ製造(ミイラは死んだ人が生き返る事を前提に作られていると考えられています)にとり入れた死後復活再生の考え方。
  • 糞球を転がす姿を太陽の東から西への移動と重ねる類似の考え方。

このように太陽の姿(外観)、動きと重ねる事で聖なる昆虫として崇拝していました。
(ただし、古代の事柄なので、この考え方が今後、正しいとは確定できません。

ピラミッドが歴代ファラオ(王)の「墓」と言われてきましたが、最近は別の説が研究されているのがよい例です)

 

太陽神ケプリと言われても何?? と思われるでしょうね。
古代エジプトでの太陽神といえば有名な「ラー」ですが、この神は他の者と融合して姿を変えます。

(太陽神と言われる者は、「ラー」 · 「アメン」 ·「 アテン」 · 「ホルス」などがありますがこれらの1部の名前は記事後半に紹介する映画「ハムナプトラ」でも1部使われていますね)


名前の知れた有名な神では

ホルス神と融合して「ラー・ホルアクティ」(頭が、鷹のホルスとして書かれた姿が有名)。

アメン神と融合して「ラー・アメン」。

太陽神ケプリも太陽神ラーが姿を変えた姿(頭部がスカラベになっています)

などが、太陽神「ラー」が姿を変えて古代エジプトの壁絵ヒエノグリフ類に書かれています。 

(ヒエノグリフ=石碑や神殿、墓などに刻まれた文字)

(ヒエラティック=パピルスなどに書かれた文字はこちらです)


何か難しい話になりましたが、昆虫を調べて行くと、とんでもない世界に入り込んでしまうのですね。

(ほぼ覚えて無いのですが、文明を興味本位で調べていた頃に、確かこんな説明が記憶にあります)


ちなみに、スカラベが出てくる映画は

「ハムナプトラ・失われた砂漠の都」

「ハムナプトラ2・黄金のピラミッド」

ですが

スカラベは映画で出てくるような、生き餌(人間)を攻撃して襲うような肉食ではありません。


また映画内で出てくる「死者の書」はあのような分厚い百科事典型ではありませんが、パピルスに書かれた巻物で実在しているそうですよ。

 

こちらはパピルスに書かれたスカラベの図。
赤松の郷昆虫文化館所蔵
「昆虫漂流記」使用撮影許可。


昆虫話が映画話に代わってしまった処で、この記事はお開きにして下さいおこうと思います。
最後まで、有難うございました。

 

 

「奈良県立都市公園条例施行規則」へのリンクはこちらです

此処をクリック👈

(2023年現在、リンク先にしていた「奈良県立都市公園条例施行規則」はネット上から消去されていますので上に文章中に記載した条文が詳細明解ですので参考にして下さい.

「奈良県立都市公園条例施行規則」で検索してみましたが、禁止事項を記載された奈良県のホームページ上の一般記述だけで、指定昆虫の詳細条文内容をネット上では見つけることが出来なくなっています。