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前妻の長男への躾は、日を追うごとに激しさを増していきました。
最初は、ズボンとパンツをおろし小脇に抱えて、お尻を平手で叩いていました。
何度かやられる内に、長男も学習し、お尻を叩かれそうになると、泣いて必死に抵抗しました。
前妻は全身を使って拒否する長男のお尻を叩くのを面倒がり、肌が露出している腕や腿を叩くようになりました。
そちらの方が、わざわざズボンとパンツを下ろして小脇に抱えるよりも、手っ取り早く、長男が嫌がるよりも先に叩く事が出来たからです。
まだ幼い長男は、叩かれると泣き叫ぶようになりました。
彼なりの必死の抵抗だったのでしょう。
「助けてー!殺される!」
「うるさい!近所に変な目で見られるだろ!騒ぐのやめろ!」
このように泣き叫ぶ子供と、怒鳴りながらそれを追いかける前妻の光景は、この時期嫌と言う程目にしました。
この頃、流石に私も見ていて、躾とは思えなくなって来ていましたから、鬼のような形相で長男を叩く前妻に、
「もうやめろ!」
「そこまでする必要あんのかよ!」
等と呆れ気味に怒鳴りました。
しかし私が注意する度に前妻は、
「エル家の悪い血のせいで、この子は馬鹿な子になったから、叩かないと分からないんでしょ!」
と事ある毎に、私の血のせいで子供が悪くなったと言いました。
毎晩のように、アパートの一室から発せられる怒鳴り声と叫び声を、近隣の住民は嫌でも耳にしました。
そして誰かは分かりませんが、児童相談所に連絡した人がいたようです。
ある日の夕方、二人の女性職員が訪ねて来ました。
「近隣の方から通報がありまして、子供を毎日虐待しているとの事でしたので、今回調査に参りました。あがってもよろしいですか?」
二人の女性職員は、そう言って、自宅にあがり込んで来ました。
私が休みの日に来訪しましたから、事前に調査していた事は明白でした。
一人の職員が子供の服を脱がせ、全身をくまなく検査しました。
もう一人の職員が私と前妻に事情聴取しました。
前妻は最初は憤慨した態度で、
「私は子供を虐待なんてしてません!愛情を持って育てています」
などと言い、終いには泣き出してしまいました。
そして泣きながら、自分の正当性を主張し続けました。
私は私で、
「妻も最初の子供で、躾に一生懸命なのだと思います。確かにお尻を叩いたりはしましたけど、虐待とかそう言った類のものでは無いですよ」
と説明しました。
流石に痣になる程の暴力は振るっていなかった為、この時は厳重注意だけで済みました。
職員が帰った後、前妻は口汚く罵りはじめました。
「一体誰が通報しやがったんだ!きっと下の奴だ!あいつ私の事いっつも睨んでたし」
「大体、〇〇が悪いんだよ!たいして強く叩いても無いのに、大げさに泣き叫びやがって。私が恥かいたじゃんか!」※○○は長男の名前
「あんたが叩かないから、私が叩くはめになるんだよ!あんたのせいだ!」
前妻は身振り手振り、大声でまくしたてました。
「あのな、お前、すでに躾の域を超えてんだろ。もう叩くのやめろよ」
私がそう言っても、前妻は全く聞いていないようでした。
私は大きくため息をつき、長男をぎゅっと強く抱きしめました。
俺が仕事に行っている時に、殺されるかも知れない。
この時、ふっとそんな考えが頭を過りました。
前妻はこの日を境に、もしもまた児童相談所の職員が来た時の為に、長男への暴力を頭部に集中するようになります。
何故なら、痕が残らないからです。
私は前妻の悪魔のような閃きになどは全く気が付かずに、ただ目の前のこの女が優しい人になる事を強く願っていました。