ウサギ跳び | 店舗探し.comの過去コラム

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2013/3/14

 

“東大が推薦入試”。
 
昨日、こんなニュースが流れました。
東大の浜田純一学長は、記者会見で、

 

「1点刻みで合格、不合格を決めていいのか」

 

と話し、点数以外の多様な価値観も評価できる入試方法を探って
いく考えを示したとのことです。
 
東大を頂点とする、いわゆる有名大学に合格しさえすれば、その
後の人生の成功が約束されたも同然だ、との学歴偏重信仰を盲信
している人など、周囲にはほとんど見当たらなくなりました。

 

シビアな競争が繰り広げられているビジネスの現場においては、
名目的な肩書きよりも、実践的な行動力や反射神経に優れた人間
の方が遥かに戦力になることがわかっているからです。
 
「根性さえあれば、如何なる目標も達成できる」とする根性論の
象徴ともいえる『巨人の星』では、野球部員たちはぶっ倒れる
までウサギ跳びをし、星飛雄馬は爪が割れた手で血染めのボール
を投げ抜きました。
 
ウサギ跳びは、トレーニングとしての効果は期待できないどころ
か、医学的見地からは、関節や筋肉を傷めるなどむしろ有害だと
の指摘があり、スポーツ指導の現場から姿を消したのは1980年代
のことです。

 

以来、炎天下で水を飲まずに練習したり、怪我や病気を押して
試合に出場するなど、肉体や精神に負荷を掛け苦痛を味わわせる
ことに重点を置いた指導方法は徐々に姿を消していきました。
 
擦り傷・切り傷には、消毒薬をかけてから傷を乾かしておくこと
が回復するための早道だと刷り込まれていました。

痛い思いをするのは、消毒薬が病原菌と戦っている証拠だから、
治すためにはこの苦痛に耐えなければいけないと、なんの疑問も
持たずに来ました。

 

しかし、消毒薬による痛みは、火傷に熱湯を注いでいるような
もので、さらに乾かしてしまうと、むしろ回復を遅らせてしまう
とする説が、ここ数年台頭してきました。

消毒はせずに水などで洗い、後は傷を濡れた状態のまま保持する
湿潤治療は、スポーツ指導の現場では当たり前になってきている
ようです。
 
受験においても、歴史年号を丸暗記したり、好きでもない教科を
一律に無理強いし、その苦しみに耐え抜いた者こそが優秀である
と一義的に判断することの愚に、日本を代表する最高学府も、
ようやく気が付いたということでしょうか。
 
浪人生だった我が娘ですが、希望していた大学はすべて不合格と
なり、かろうじて引っかかった大学に通うことになりそうです。

その割にはあっけらかんとし、東大学長の記者会見の、1点刻み
云々のくだりでは、我が意を得たりとばかりに頷いて私を睨み
つけるばかりです。
 
ゆとり教育で育ち、ウサギ跳び並みの努力とは無縁の浪人生活
を、楽しく軽やかに駆け抜けた娘ですが、さて、はたしてこれ
で本当によかったのかどうか・・・。

 

ウサギ跳びによるしごきを耐え抜いてきた世代の親としては、
少々複雑な思いがあるのです。