2010/2/02
人間の手は２本あり、顔は体の前面についている。歩くときは
足を互い違いに前方に踏み出す。
至極あたりまえのことですが、身体の特徴は、人間の動きに
制約を加えています。
それは、ショッピングにおけるお客様の無意識の動きの中にも
顕著に現れています。
『なぜこの店で買ってしまうのか』
パコ・アンダーヒル著 ハヤカワ新書
本書では、お客様の店内におけるすべての動きを長年にわたって
観察してきた著者が、その膨大な記録を分析することによって、
店舗では商品をどのようにディスプレイしたらよいのか、お客様
に対して、どんなサービスを、どのように提供すれば効果的か
などについて、多くの示唆を与えてくれます。
例えば、お客様の左手がバッグでふさがっていれば、使えるのは
右手だけです。
右手に商品を持ってレジに向かう途中に、少しばかり購買意欲を
刺激する商品があったとしても、それ以上は手に持つことが出来
ないので、そのまま買うのを諦めてしまうかもしれません。
しかし、もしそのタイミングで、店員から買い物カゴを渡された
としたらどうでしょう。
その商品ばかりか、カゴの余った空間を埋め尽くすまで、さらに
余分に商品を買ってくれるかもしれません。
著者による、長年にわたる徹底したフィールドワークから導き出
された提案には、とても説得力があります。
本書は世界的なベストセラーですから、すべてを実践したからと
いって、それだけで勝利が約束されるとは限りません。
しかし、少なくとも、本書の内容についての知識がなければ、既
に本書で紹介されたノウハウを巧みに取り入れているライバル店
には、きっと差をつけられてしまうでしょう。