小舟の転覆が・・・ | 店舗探し.comの過去コラム

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2014/1/30

地勢的に遠く離れた国で起こっていることにはどうしても
鈍感になりがちなのはやむをえないかもしれませんが、対岸
の火事と、のんびり構えているわけにはいきません。

『EU崩壊』
  木村正人著 新潮新書

アメリカで起きたリーマンショックが日本の景気に打撃を与え、
ギリシャ危機がEUの存続を危うくしたことで、その動揺が日本
にも及ぶ、いわば一蓮托生の時代に私たちは生きています。

本書の最後は「3つの収斂」と題する章ですが、シンガポールの
リー・クアンユー公共政策大学院のマブバニ院長が行った講演
内容を紹介しています。

“「世界にはまったく異なる二つの物語があります。一つは世
 界人口の12%に過ぎない先進国から語られる話、もう一つは
 88%を占める『それ以外』の物語です。
 先進国はどんどん悲観的になり、それ以外は楽観的になって
 います。」

 著名な経済学者のほとんどが先進国からの視点から考えるの
 に対して、「先進国以外」からのアプローチが新鮮だった。
 マブバニ院長は、世界で進行しつつある三つの「収斂」を例
 示した。

(1)南北の収斂・・・アジアの中流階級は5億人いて、20年には
 3.5倍の17億5000万人に膨らむ。アジアの中流階級だけで欧米
 の総人口の1.5倍に相当するようになり、全体では30年までに
 世界の半数以上の49億人が中流階級になっている。

(2)東西の収斂・・・東西はかつての「共産圏」「自由主義圏」
 を指すのではなく、「アジア、イスラム」と「欧米」を意味
 するようになった。

 中国は依然として共産主義国家だが、状況は一変した。毎年
 7000万人の中国人が国を離れ、同数の中国人が中国に戻って
 いる。
 いまや中国と欧米より、ロシアと欧米の違いの方が大きくな
 った。

(3)世界は一つの船に乗っている・・・第二次大戦後、70億人が
 193か国に分かれて暮らす秩序が構築され、世界は193隻の別々
 の船に乗っていた。

 しかし、一国主義のブッシュ前大統領でさえ、アメリカだけ
 では世界金融危機に対処できないことを悟り、主要20か国・
 地域首脳会議(G20)を招集した。

 世界は今や1隻の船に乗っている。193の船室に分かれている
 だけだ。”

EUの崩壊が現実のものとなれば世界秩序全体の枠組みが変わる
ことは間違いありません。
ユーロの崩壊は、円や元、ドルをも解体し、ビットコインが取
って変わるなどという変化が起きるかもしれません。

いや、これからは、EUどころか、たとえ地球の裏側にある小国
で起きた危機であったとしても、決して他人事ではないのだと
自覚するべきでしょう。
危機の解決に向けて、積極的にコミットすることが求められて
いくのです。