混沌の森 | 店舗探し.comの過去コラム

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2010/07/14

『数学は最善世界の夢を見るか?』
    イーヴァル・エクランド著 みすず書房
 
それが神の力であれ、自然の摂理であれ、今ある世界は必然の

産物なのでしょうか?

あらゆる自然現象が、数式によって説明しつくせるのだとしたら、

その秩序の向こうに、神の意思、もしくは運命を見てしまうのも

やむをえない話です。
 
まったき混沌として、不可解で畏れ多かった自然現象が、次々に

数式によって説明されていけばいくほど、この世界が、ある合理的

な秩序によって体系づけられ、すべての現象には、整然とした法則

が支配するのだとの認識が、ある時期までは支配的でした。

もし、数学の研究がユークリッド幾何学で進化を止めていたなら、

世界は芸術的に美しく完成されたものとして認識されていたはず

なのに・・・。
 
「科学は事実上、複数の科学に分離し、それぞれ独自の動作規則

 をもち、数々の成功を収めてきたといってよいだろう。

 しかしその一方で、統一的な世界観は 現れなかった。」

                                (本書より)
 
高度に研究された科学は、世界が秩序ではなくて、混沌そのもので

あることを証明しています。

3,141592653589793238462643383・・・・・

円周率の数字の列は、無限に続き、すっきりと終わることはありま

せん。
誤差0の完全世界にたどり着くことはできないのです。
 
所詮、混沌は混沌で、高邁な政治理論も、最先端の経済学も、完全

なる最善世界を実現することは不可能なのかもしれません。
絶対に失敗しない、完全な事業というものが、少なくともこれまであり

えなかったように。
 
それならば、いっそ混沌の森の手前に広がるのどかな草原にごろんと寝ころんで、勝負を回避しましょうか。
それでもなお、敢て混沌の森に分け入って、道なき道を一歩でも先に進むべく歩き続けますか?
 
どちらを選んでも、行く手にあるのはやはり、混沌ばかりなのです。