竹の子生活 | 店舗探し.comの過去コラム

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2012/6/14

会社人間として猛烈に働いてきたAさんは数年前に定年を迎えました。
サラリーマン時代にコツコツと貯めたお金で小さいながらアパートを
所有し、株も少々運用しています。
多少年金の支給額が減ったとしても、老後の心配はありません。
老妻と二人で優雅な隠居生活を楽しんでいました。

ところが、独立して一家を構えていた息子が勤めていた会社が、リー
マンショックのあおりを受けて倒産、失業してしまいました。
経済状況が悪化して息子一家の家庭も崩壊、息子は実家に転がり込
んできました。

当初は熱心に職探しをしていた息子ですが、再就職がままならない状
況に精神が荒廃し、最近ではハローワークにも通わずに家に引きこも
っています。

経済的に余裕のあるAさん夫婦は、息子を養ってきましたが、収入を
支えてきたアパートには空室が目立つようになり、株も元本割れをし
ています。
息子はもはや就職をあきらめ呆然と過ごしています。
生活を切り詰めてはいますが、年金がカットされ消費税も増税される
と、いよいよ家計は逼迫し、やむを得ずアパートと株を処分すること
にしました。

計算すると、売却で得た資金も、夫婦が平均寿命より長生きすること
になると底をついてしまいます。
昼間からいびきをかいている息子の様子を横目で見ながら、日一日と
残金が減っていく通帳を眺めるたびに、Aさんは深いため息を吐くば
かりなのです・・・。

日本マクドナルドの好業績が続いています。
おしゃれな新型店、アメリカンバーガー、Wドライブブスルーなどの
成功をその要因とする報道がなされています。
しかし、好業績とされる数字の中に、店舗売却益を計上していること
はあまり大きく取り上げられることがありません。
マクドナルドではここ数年、直営店のFC化を精力的に進めており、そ
の際に発生する店舗売却益も、好業績の一端を担っているのです。

減収増益。

売上げが思うように上がらない内需依存型の企業は、リストラなど、
いわば節約術によって利益を確保してきました。
しかし、いよいよ節約の余地がなくなってきて、資産売却を織り交ぜ
ながら決算の帳尻を合わせる傾向が強まってきています。
市場縮小に対応する出口戦略が見出せないなか、不安に駆りたてら
れながらも、問題を先送りして時間稼ぎをしているスタンスは、冒頭
のAさんと変わりません。

典型的な日本人家庭Aさんが陥っている状況も、企業が抱える問題
も、日本国が直面している財政事情の縮図となっているようです。
いずれにしても、このまま“竹の子生活”を続けていけば、自らの資
産を食い尽くしてしまうまでの時間はあまり残されていないのです。