『ドライビング Miss デイジー』 | 店舗探し.comの過去コラム

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2011/6/13

『ドライビング Miss デイジー』は1989年度のアカデミー賞の作品
賞を受賞した映画です。
80歳で主演女優賞を受賞したジェシカ・タンディ演じるユダヤ系老
婦人デイジーと、モーガン・フリーマンが演じる黒人の運転手ホー
クとの25年に及ぶ心の交流と友情を描いた名画です。

息子にあてがわれた運転手ホークを当初拒否していたデイジーが、
徐々に彼を受け入れ、信頼を強めていく様子が、日常生活の中での
細かいエピソードの積み重ねによって表現されていきます。

「歴史に残る最大の悲劇は、悪しき人々の過激な言葉や暴力ではな
 く、善良な人々の沈黙と無関心な態度です。
 我々の世代が後世に恥ずべきは“暗闇の子”の言動ではなく“光
 の子”が抱く恐怖と無関心さなのです。」

これは、映画の終盤で、キング牧師の夕食会にデイジーが出席したと
きのシーンに、運転席で待つホークの悲しげな表情に合わせるように
して流れる、キング牧師の演説の一節です。

自分には偏見などないと口にするデイジーと黒人であるホークとの間
に、それでも薄紙のように存在する居心地の悪い違和感は、ユダヤ人
であるデイジーが日常生活で実感せざるを得なかった偏見と、おそら
くは同質のものなのです。

私たちは、身の回りで起きる大小さまざまな厄介ごとに対して、小首
を傾げたり曖昧な笑いを浮かべては当たり障りのない態度に終始し、
結果的に沈黙の善人を決め込んでやり過ごすことが多いのではない
でしょうか。

大震災から3ヶ月が経ちました。
この悲惨な事態の収拾に責任のある私たちは、後世に恥ずべき歴史
を決して残すことのないように、沈黙と無関心の殻を破らなければ
ならないのです。