美しき天然 | 店舗探し.comの過去コラム

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2013/3/8

 

春は桜の あや衣
秋は紅葉の 唐錦
夏は涼しき 月の絹
冬は真白き 雪の布
 見よや人々 美しき
 この天然の 織物を
手際見事に 織り給う
神のたくみの 尊しや
 
「美しき天然」の2番の歌詞です。

日本最初のワルツともいわれるこの曲は、サーカスの開演時に
ラッパや太鼓で演奏されると哀調を帯びて響き渡ります。
 
日本各地を転々として、空き地や公園の一角にテントを張って
公演するスタイルのサーカスは「木下大サーカス」ぐらいとなっ
てしまいまいしたが、昭和30年ごろまでは30団体近くが活動して
いたそうです。

 

『フィリピーナを愛した男たち』で大宅壮一ノンフィクション賞
を受賞するなど、ノンフィクション作家として活躍している久田
恵さんの、いわば出世作となったのが『サーカス村裏通り』です。
離婚して4歳の息子を抱えるシングルマザーとなった久田さんが、
キグレサーカスの炊事係として過ごした1年間の体験を綴った本
です。
 
流れ者であること、「ろくろ首」など異形の見世物小屋にその源
流を持つことなどから、「サーカスに売り飛ばされる」とか「サー
カス団に子供をさらわれる」など、いわれなき偏見を受けること
の多いサーカスですが、本書を読むとそんな先入観は一新される
はずです。
 
移動のたびにテントを設営したり撤去したりの重労働をこなさな
ければなりません。
暑さ、寒さ、台風、雪と天候の影響をもろに受けるテント暮らし
では、皆が協力し、助け合っていかなければ成り立っていかない
のです。

 

サーカスに暮らす人々は、定住し、屋根のある暮らしが当然と思っ
ている私たちよりも、はるかに温かく濃密な人間関係に包まれた
生活を営んでいるのです。
 
『サーカス村裏通り』からの一節です。
 
“初舞台から二年、亀ちゃんは今カンスー(綱渡り)で落ちるこ
 とはない、という確信を得るようになった。
 自分が一本の棒になればいいと気がついたのである。いわゆる
 ヤジロベエの中心棒である。

 

 手にしたバーにバランスのすべてを委ねる。


 そうすれば、たとえバーが鉄線に対して直角まで傾いても、ど
 んなに大きく身体を揺らしても、足が鉄線から離れなければ
 ヤジロベエは落ちるはずがない。

 それは物理の法則であり、科学的な根拠に基づいた真実なので
 ある、と。

 

 ・・・亀ちゃんが自分が一本の棒であると確信して鉄線を渡る
 ようにどんなに他人からは危なげに見えても、本人がひとつの
 確信を持って生きてさえいれば、一本の鋼のごとき人生からも
 転げ落ちることはないのかもしれない。”
 
【ヤジロベエは直角まで傾いても落ちない】

 

確信を持ち、自信満々で生きていきましょう。
まだまだ余裕で大丈夫です。
私も、あなたも。
そして美しき天然に囲まれた我が日本も!