笑ってさよなら | 店舗探し.comの過去コラム

店舗探し.comの過去コラム

会員様向けメルマガに掲載された過去のコラムを掲載しています。

2016/12月号

 

今年も残すところあと1日となりました。
年が押し詰まるにつれて、寂寥感が募ってきます。

『笑ってさよなら~四畳半 下請け工場の日々~』(2011年 CBC製作)

というドキュメンタリー映画を観ました。トヨタ自動車の4次下請けの

町工場が、廃業するまでの日常を追ったものです。


働いているのは56歳の女性経営者と近所の主婦2人だけ。わずか四畳半ほどのスペースで、車のどの部分で使われている部品なのかも知らずに、1個作って5円という内職仕事のような作業をしています。


しかし、女性経営者はトヨタショックを経験したことで、いつか突然、仕事がなくなってしまうかもしれない下請けという立場に不安を覚え、廃業を決めたのです。
公的な倒産件数にもカウントされない町工場は、ひっそりと廃業しました。
町工場は無くなりましたが、部品はどこか別の工場で作られるようになるだけで、トヨタが窮地に陥ることはありません。
 

女性経営者は新たに介護の世界へと転職しました。従業員だった主婦2人も、新しい職場で相変わらず働いています。
町工場の廃業も、悲惨なばかりではありませんでした。

元女性経営者が、介護現場で頼りにされながら活き活きとした生活を送っているのを見ると、彼女は工場時代よりもむしろ幸せそうに見えるのでした。

廃業、倒産、吸収合併・・・。


生まれてきた者が必ず死ぬように、企業もいずれはその役目を終えて消滅していきます。
国も地球も宇宙も例外ではありません。どれも死から免れることはできません。

しかし、死とはすべての終わりではありません。

人は死ぬと、荼毘に付されます。燃えた肉体は煙となって大気に混じり、世界中に散らばっていきます。

その空気は、赤ちゃんが生まれて初めて産声を上げた時、吸い込んだ空気にも含まれていることでしょう。

骨は地中に埋められて、ゆっくり土へと還っていきます。いずれ土の養分となって米や野菜を育てることになるでしょう。

死とはつまり、新しい生の始まりでもあるのです。

人間は、生まれては死に、死んでは生まれを繰り返してきました。
生死のサイクルは、人間に進歩をもたらします。
新しい技術、新しい制度・・・。
技術や制度は、生死のサイクルが繰り返されるたびに、少しずつ改良されていくのです。

生死のサイクルは、螺旋を描くように周回しながら常に前進していくものなのです。
消えゆく生は、死を通じてより進化した生へとつながっていくのです。

年の瀬は物悲しいものです。

また1年経過して、たそがれゆく命と同様、死の気配が漂うかのようです。
しかし、呼応するかのように、新しい年に対する期待も、だんだんと膨らんでくるのです。
死が忍び寄る気配は、より良い生への呼び水である、と、本能的に察知しているからなのかもしれません。

今年1年、大変お世話になりました。
皆様にとって来年が、より良い1年となりますことを、心よりお祈りいたします。