経営者の報酬 | 店舗探し.comの過去コラム

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2013/11/29

 

スイスでは企業経営者の報酬について、その会社で最も賃金の

低い従業員の12倍を上限と定める提案がなされ、先日、国民

投票が行われました。

 

この提案は社会民主党青年部が中心になって発議されたもの

です。

一般に「1:12イニシアチブ」と呼ばれ、企業経営者の1ヶ月の

収入が、最も賃金の低い従業員の1年分の収入を超えることが

あってはならないという考えに基づくものです。

 

提案した議員は、所得格差の拡大は不公平を生み、一握りの

富裕層が社会、経済、政治に対して不当な影響力を行使する

ことにつながり、「民主主義が脅かされる」と訴えました。

 

現在、スイスでは、企業経営者と平均的な平社員との格差は

148対1になっているそうです。

 

ちなみにアメリカでは、米大手500社の最高経営責任者(CEO)

の1日の収入は、平均的な平社員の約1年分の収入に相当し、

格差は平均で354対1に達しています。

なお、米企業250社を対象とした調査ではCEOと一般社員の所得

格差が最も大きいのは、大手百貨店JCペニーの1795対1だった

とか。

同社CEOの1年の給与と賞与を合わせた年収は約54億円。これに

対して一般社員は約300万円だったそうです。

 

日本では、最高でも30対1程度とされ、平均的には10対1だと

言われていますので、諸外国に比べて極端に差が少ないと言え

ます。

 

所得格差に対する感覚は、立場によって意見が大きく異なる

ことは承知しています。

しかし、JCペニー氏が、たった1日に処理した仕事の価値が、

平社員の3年分に相当すると聞けば、違和感を感じる人は多い

でしょう。

 

立場が違えば、企業に及ぼす影響力に差が出るのは当然ですし、

能力にも優劣があるのは厳然たる事実です。

しかしまた、経営者が経営者だけで企業の仕事一切をこなすこと

が出来ないのもまた事実です。

 

スイスの「1:12イニシアチブ」に対する国民投票の結果は、

賛成34.7%、反対65.3%と、かなりの差で否決されました。

この法案が通ると、有力企業が流出してしまうのではないかと

いった懸念が喧伝され、純粋に所得格差の是非とは違った理屈

が票を左右したとの見解もあったそうです。

 

こうした報道が日本ではそう大きく報道されることはありません。

日本の経営者が全体的におとなしいのでしょうか、それとも、

世間一般の平均化への圧力が強いからなのでしょうか。

 

いずれにしても、程度塩梅をよろしく心得、互いの立場を尊重

することで成り立つ日本型の企業の方が、結局は理にかなって

いるのではないかと思うのです。