2011/11/15
2010年5月6日午後2時42分44秒75ミリ秒。
S&P500株価指数先物・E-ミニが異常な値動きを示し始めると、影響
は一気に全米に広がり、「フラッシュ・クラッシュ」が発生しました。
『BS世界のドキュメンタリー フラッシュ・クラッシュ』(NHK-BS1)
アップルやP&Gなどの大型株など多くが暴落を始め、42ドルだった
株価が1セントになってしまう銘柄も出現して、一時的には8260億ドル
もが消えて失くなってしまいました。
しかし、そのたった7分後には何事もなかったかのように株価はまた
元に戻ったのです。
コンピューターシステムが、数理モデルに従って株価や出来高などの
変化に対応して、自動的に株式売買注文のタイミングや数量を決めて
注文を繰り返す取引をアルゴリズム取引と言いますが、現在、アメリカ
の証券取引では、高頻度取引(HFT)、つまり高速自動売買が取引量の
75%近くを占めているのだそうです。
たった7分間の間に発生し収束した「フラッシュ・クラッシュ」の直接の
原因は特定できていませんが、アルゴリズム取引の作用によること
は明らかです。
市場の変化を1000分の1秒単位で捉えて売買取引をする世界に、
人間が直接コミットすることは出来ません。
ほんの一瞬のまばたきの間に無数の取引が成立し、利益が出たり
損をしたりするということは、実感としても全く理解できません。
しかし、経済はいつのまにか、ナノ秒単位の振る舞いで左右される、
人間の知覚能力をはるかに超えた世界が主戦場になりつつあるの
です。
あくびを一つしている間に、あなたは実は世界一の大富豪になって
いるかも知れません。
「はくしょん!」
あくびの後に出たくしゃみの間に、その莫大な財産は失われ、また
元の状態に戻ってしまうかもしれません。
しかもそんなことが自分の身に起きたことすら知覚できないうちに。
0と1とを超高速で繰り返して“あざなう禍福”は、もはや“縄”では
なく“光ファイバー”にしか見えません。
“邯鄲の夢”は死語になり“ナノの夢”に取って代わられるということ
でしょうか。