傷だらけの天使たちは今・・・ | 店舗探し.comの過去コラム

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2011/10/28

大嫌いだったトマトを丸ごとかぶりついて食べられるようになった
のは、食べっぷりがかっこよかった彼のマネをしたからでした。
 
『傷だらけの天使』
 
起きだしてきた主人公木暮修(萩原健一さん)が、冷蔵庫を開け、
新聞紙をナプキン代わりに首からかけるとトマトやコンビーフ、
魚肉ソーセージなどに次々かぶりつき、牛乳瓶の栓を口で開けて
流し込むまでを、延々ワンカットで追いかけた画期的なオープニ
ングでした。

革ジャンを着てヘッドフォンと水中眼鏡をつけたショーケンに
憧れた若者は、当時大勢いたはずです。
 
1974年に始まった作品ですから、もう37年も前になります。

主人公の修は探偵事務所のいわば下請け調査員とはいうものの、
指示にそむいて自分勝手な単独行動を取ることがしょっちゅうで、
いつも金に困っています。

死別した妻の実家に息子を預けているのですが、具体的な将来
展望があるようにはとても見えず、弟分の亨(水谷豊さん)と
ともに危なっかしい仕事に明け暮れています。
 
1974年(昭和49年)頃の日本は、高度成長が一段落したとはい
え、国中には経済大国の仲間入りを果たした自信が満ちており、
巨艦となった“日本丸”の行く手はまだまだバラ色で揺るぎない
と、誰もが信じていました。
 
『傷だらけの天使』で修や亨がひりひりするような【今日】に
没頭できたのは、自分達が明日の心配をしなくても“日本丸”
に任せておけば、確かな【明日】を勝手に切り開いてくれる
はずだという甘えが、背景にあったからではないでしょうか。
 
時代は巡り、巨艦だと自負していた“日本丸”も今では並みの
船に成り下がり、荒れ狂う海に翻弄されて、羅針盤は不安定に
揺れ動いています。

いつ転覆するか海に放り出されるかと気が気でない若者たちは、
自力で未来を切り開かなければならないと覚悟し、個人的な
将来設計に余念がありません。
 
「あの頃はよかったなあ。」

『傷だらけの天使』を、古きよき時代を回顧する古典として
観ることになる時代がまさかやってこようとは・・・。

生きていれば62歳。年金など払ってこなかったに違いない修は、
いったいどんな生活を送っているのでしょうか。