狂い咲き | 店舗探し.comの過去コラム

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2012/9/27

手の甲にひょろりと一本、毛が生えました。

頭髪の方はだんだん淋しくなりつつあるのに、全く毛など無かった
場所に狂ったように生えてくるとは、いよいよ体の機能も歯車が
狂って来たのかと気が滅入ります。

盛りを過ぎてしまった人が、ある一時期、勢いを盛りかえすことを
「狂い咲き」と言うことがあります。

大関‘前の山’に張り手で気絶され転がされた相撲を無気力相撲と
非難された大関‘琴櫻’は翌場所では1勝しかできずに休場し、引退

も時間の問題とささやかれていました。

ところが、その年の11月場所で14勝1敗で優勝すると、次の1月場所
も14勝1敗で連覇し、場所後に第53代横綱へ昇進しました。
横綱昇進時の年齢(32歳2ヶ月)は年6場所となって以降の最高齢で
「姥桜の狂い咲き」と言われました。

春に咲くはずの桜が、秋に狂い咲きすることがあります。

強い台風が来て葉が落ちて丸坊主になってしまったとか、毛虫が

大量に発生して葉が無くなってしまったときに起こります。
桜は本来、落葉した状態で休眠して、冬の寒さに耐えるように

なっています。

この休眠を誘発する物質は、葉の中で作られ、そして体内へ移動

するのですが、秋早く葉が落ちてしまうと、それがうまくいきません。
桜は春と勘違いしてしまうのです。
そして、桜の花芽は既に夏には準備がほぼできているので、ちょっと

した刺激で花を狂い咲かせることができるというわけです。

“猛牛”と異名を取るほど、怒濤の突き押しや強烈なぶちかましを

武器とした琴櫻が、横綱を張れるだけの実力を元来持ち合わせて
いたのは言うまでもありません。
それまでは負傷が多かったこともあり、成績が安定しなかっただけ
なのです。

狂い咲いた琴櫻は横綱在位こそ8場所と短命でしたが、その後は
佐渡ヶ嶽親方として琴風・琴欧洲・琴光喜など合計22人もの関取を
育成し、相撲人生の後半を満開に彩ったのです。

手の甲に狂い生えた一本の毛は、私の後半生の活躍を暗示する吉兆
でしょうか、それともただの老いのサインにすぎないのでしょうか。
いずれにしろ、これまで重ねてきた年齢の間に蓄積してきた、経験
や知見の内実が、問われることになるのでしょう。