黒い目のきれいな女の子 | 店舗探し.comの過去コラム

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2011/8/4

「黒い目のきれいな女の子」
 
この文を絵にするとしたらどんな絵を描きますか?
 
『日本語教室』
   井上ひさし著 新潮新書
 
冒頭の文は、昨年亡くなった井上ひさしさんが考えた、日本語
のあいまいさを示す文例です。
 
“・黒い目がきれいな「女の子」
 ・黒い目の「きれいな女の子」
 ・黒い目のきれいな女の「子」
 ・黒い、目のきれいな「女の子」
 ・きれいな女の「目の黒い子」
 ・目のきれいな女の「色の黒い子」
 
 まだまだありますから、暇な折にみなさん考えてみてください。”
 
・色が黒く目のきれいな女の「子」

私には他にこれしか見つかりませんでしたが、まだ何か別の解釈は
可能でしょうか?
 
いずれにしても、文例を元に絵を描いた場合、解釈によっては、
絵には女の子が一人だったり、母子が二人描かれたりするでしょう。
女の「子」と解釈した場合は、子供の性別もはっきりしません。
 
このように、なんともあいまいな日本語は、細部まで誤解のない
ように正確に描写することが難しいのです。
必然的に、日本語によるコミュニケーションではそのあいまいな
部分を想像力で補うこと、つまり「察する」ことが重要になります。

日本語を介しての察し、察されてのコミュニケーションから「阿
吽(あうん)の呼吸」などという独得の文化も醸成されてきたの
でしょう。
 
楽天やユニクロなど、社内公用語を英語とする日本企業が増えて
きています。
これも、大量の情報を正確にやり取りしなければならないビジネス
シーンにおいては、あいまいな要素を孕んだ日本語は、厄介な言語
だからかもしれません。
 
わたくし、わたし、あたし、あたい、あちき・・・

夏の夜。
彼氏に甘える彼女が、選び取った言葉がかもし出す、デリケートな
ニュアンスにこそ、日本語の本領があるのでしょう。