2012/6/4
「初めて入った飲食店で、注文した料理がまずかったとします。
こんな時、日本人は無理をしてでも8割がたは食べる。そして帰り際に
『残してしまって申し訳ありません。』
とむしろ謝って出ていくんです。
わが国ではこんなことは考えられない。
『なんだこの料理は。まずくて食べられない。』
自分の感想をしっかり主張して抗議するものです。」
ある外国人経営者から聞きました。
「よりそいホットライン」という無料相談ダイヤルに電話が殺到して
パンク寸前だという新聞記事がありました。
「失業して家を失った」
「5日間何もたべていない」
「誰かと話がしたかった」
「死にたい」
大震災後の社会不安の高まりを受けて3月に開設された「よりそい
ホットライン」は全国38か所の支援拠点で活動しています。
1日に2万件もの電話がかかってきているものの、つながるのは1200件程度。平均20回かけてやっと通じる状況だそうです。
本来は行政のしかるべき窓口に行って相談すれば必ず対応してもら
えるような深刻な悩みでも、気が引けて面と向かって言うことができないのでしょう。
繋がることのなかった電話の向こうでは、危機的な状況にありながらも
声を上げられない人たちがたくさんいるのです。
生活保護の対象としては不適当と思われる事例が糾弾されました。
もちろん、不正受給は許されることではありません。
しかし、今回の騒動によって不正が減るようにはどうも思えません。
不正受給の取り締まりを強化したところで、確信犯は、よりばれにくい
抜け道を探して、さらに巧妙な手段を講じるだけでしょう。疑心暗鬼な資格審査は、相談に行く心理的なハードルを高くするでしょう。
本来、救済すべき対象者であっても、生活保護を受給することに後ろめたさを感じている人であれば、窓口に向かう勇気は萎えてしまうでしょう。
思い切って掛けた「よりそいホットライン」につながることがなく、ため息をつきながら受話器を置いた残りの18800人が心配です。
自己主張できないひ弱さも、一方から見れば心優しさに通じます。
電話を掛けることしかできない彼らは、恥を知り、謙譲の美徳を体質化
した、むしろ誇るべき日本人に違いないのです。