いないいないバア | 店舗探し.comの過去コラム

店舗探し.comの過去コラム

会員様向けメルマガに掲載された過去のコラムを掲載しています。

2014/2/26

 

作った料理の味見をしたら、やけにしょっぱい。
明らかに塩の入れすぎです。
彼は、料理に大量の砂糖を投入します。
 
料理初心者が一度はやってしまう失敗で、もちろん味は、
余計にまずくなってしまいます。
 
先週放送された『明日、ママがいない』(日本テレビ)第6回
は、まさにこの失敗をやってしまったようです。
 
児童養護施設を舞台に、様々な事情で親と離れた子どもたち
の目線から「愛すること」・「愛されること」をテーマにし
たサスペンスドラマである『明日、ママがいない』は、初回
分が放送すると、非難の声が巻き起こりました。
 
国内唯一の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」を
運営する慈恵病院が

 

「フィクションだとしても許される演出の範囲を超えている」

 

として、番組の放送中止や内容の再検討などを求めました。
 
さらに、全国児童養護施設協議会と全国里親会は会見を開き、

 

「視聴者の誤解と偏見を呼び、施設で生活している子どもた
 ちの人権を侵害しかねない」

 

と批判した上で、子どもへの差別や偏見を助長するような
表現を改めるよう求めました。
 
日本テレビは、当初の予定通り全9話を放送し、脚本や演出
の大幅な変更は予定していない、と発表しました。
 
しかし、日本テレビの視聴者センターへかなりの数の抗議が
寄せられ、提供スポンサー全社がCM提供を取りやめてしまうと、

 

「ストーリーは当初の構想に沿って展開するが、誤解がない
ように細部で注意を払う。」

 

と、態度を変化させたのです。
 
第6回は、この発表後に撮影されたことから、ドラマにどんな
変化が起こるのか、注目を浴びていました。
 
親から捨てられ、心に傷を負ってささくれ立っていた子供たち
は、どこにでもいる心優しい子供へと変貌を遂げました。
不穏な雰囲気だったグループホーム「コガモの家」は、仲良し
兄弟の共同生活の場となったようです。
 
初回から欠かさずに見てきた人からすれば、まさにしょっぱい
料理に砂糖を大量に足してしまったような、何とも奇妙な
味わいのドラマだとの感想を持ったことでしょう。
 
一貫性を欠いたドラマは、ここに至る背景を知らない人が見れ
ば不可解なものでしょうし、事情を知った人たちには、できの
悪いブラックコメディーとしか思えないことでしょう。
 
『明日、ママがいない』はもうやめて、いっそ
『明日、ママがいないいないバア』
と、訳の分からないタイトルに代えてしまったらどうでしょう。
 
圧力をかけられて変更を余儀なくされた脚本家は、よほど腹に
据えかねたのか、施設長が子どもたちを集め、次のように語ら
せることで、こうした事態をあてこすりました。
 
「お前たちは、何に怯えている?
 臭いものにフタをして、自分とは関係ない。それで終わらせ
 るつもりか? 


 大人なら分かる。大人の中には、価値観が固定され、自分が
 受け入れられないものをすべて否定し、自分が正しいと、声
 を荒げて攻撃してくるものもいる。
 そんな大人になったらおしまいだぞ?話し合いすらできない、
 モンスターになる。」
 
時代に合わなくなった制度、原発問題・・・。
 
根本からやり直すことなく、塩と砂糖を交互に入れてなんとか
食べられるようにしようと躍起になっている私たちは、まだ
まだ料理初心者なのでしょう。