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2011/02/26

「私がやったんです。」

真坂刑事に向かってこう言うと、女は泣き崩れた・・・。


開店したばかりの午前中、館内にはお年寄りの姿が目立ち
ます。
品出し作業に汗を流す従業員を横目にさっさと買物をすま
すと、いつもの顔なじみと、ガランとしたフードコートで
おしゃべりをします。

そのうち、早い昼食にとぽつぽつスーツ姿が現れると、お
年寄りたちは退散します。

やがて正午を回る頃には、建物の上層階のオフィスや周辺
の事業所で働いている会社員やOLが殺到し、フードコート
はあっという間に満席になります。

昼食時間の喧騒が一段落すると、幼稚園帰りの子供を連れ
た若いお母さんが夕食の買物にやってきます。クレープや
たい焼きのおやつを子供達が頬張っておとなしくしている
ほんの少しの間が、ママ友との情報交換の時間です。
話に夢中になっていると、おやつを食べ終わった子供がぐ
ずりだしたので、早々におしゃべりを切り上げて帰ってい
きました。

入れ違いに学校帰りの中高生がなだれ込んできます。
ラーメンやカレーを注文してはもりもりと食べて、育ち盛
りの胃袋を落ち着かせると、ゲームセンターを覗きに出て
いきます。

女子高生たちは山盛りのポテトを次々に口に投げ入れ、
ジュースを流し込み、それ以外の時間はピーチクパーチク
若者言葉でまくし立てて、と口を休まず動かしています。
広げたノートはいつまでも白紙のままで、宿題はいっこう
に捗ってはいないようです。

夕飯の買物に来た主婦が、油を売っている自分の娘を見つ
け、追い立てて帰した後は、主婦達のコーヒーブレイクで
す。
亭主の悪口と芸能人のゴシップで盛り上がっていると、食
品売り場からタイムサービスの案内が聞こえてきます。
主婦達はあっという間に席を立って食品売り場に殺到します。

夕食の時間帯になりましたが、席は半分も埋まりません。
独身なのか単身赴任なのか、仕事帰りらしきひとり客が黙々
と夕食を済ますと、音もなく出て行きます。

ラストオーダーが近くなる頃、SC内で勤務しているある売
場の従業員が大勢でやってきました。徹夜で売場のディス
プレイを一新するとかで、他店や本社からも総出で応援に
駆けつけてきたのだそうです。
残業食なので会社が払ってくれるからと、客席いっぱいに
広がり、皆思い思いのものを食べています・・・。

これは、『とあるSCのフードコート』で展開された「ある
日」の様子です。

『とあるSCのフードコート』に物件が出ました。

「ある日」あなたは物件の確認に行きます。
独立開業を計画しているあなたですが、まだ会社はやめて
いません。
仕事帰りにしか時間が取れないので、平日の現地調査は遅
い時間にしか行けないのです。

あなたが『とあるSCのフードコート』に着くと、既にラス
トオーダーの時間を過ぎていました。
しかし、客席は半分以上が埋まっており、とてもにぎわっ
ています。

「こんな時間帯でもかなり利用客があるんだな。」

あなたは運命の物件に出会えた予感で胸が高鳴ります。
「次の日曜日」、昼過ぎにあなたは『とあるSCのフードコ
ート』を再訪します。
客席は満席です。それどころかどの店も行列を作っていて、
てんてこ舞いの忙しさです。

「よし、決めた!」

翌日、あなたは辞表を提出し、待ちに待った独立開業への
具体的な行動に踏み出すのです。

あなたが『とあるSCのフードコート』に行った「次の日曜
日」には『とあるSC』の近くにある市営グラウンドで、年
に一度の市民祭りが開催されていました。
その日、『とあるSC』では、直近の1年の内で最高記録とな
る売上をたたき出していたのでした。

一日に昼と夜があるように、コインに表と裏があるように、
人間にも本音と建前があるように、SCにもいくつかの顔が
あります。

お客様で溢れかえっているときは、元気で溌剌とし、自信
に満ちた表情を見せます。
閑古鳥が鳴き、館内が閑散としているときは従業員の動き
もどこか緩慢で、SC全体からため息が聞こえてくるようです。

たまたま遭遇した、ある瞬間のSCの表情だけを見て、物件
の評価を決めつけてしまう。
そしてその評価だけで出店を決めたりあきらめてしまった
りという判断をしてしまう人が、実は意外に多いのです。

その結果、計算違いが生じて失敗してしまったり、逆に大
きな出店チャンスを逃してしまったりします。

年間売り上げに対する季節変動の特徴。時間帯ごとの売上
推移状況。来店者数、レジ通過客数と平均客単価・・・。

SCには客観資料がたくさんあります。

客観資料で印象を修正し、物件を冷静に見極めること。
この作業抜きには、決して出店の成功はありえないのです。


「・・・私のことを『ヤスコ姉ちゃん』と呼んでいるつも
りでも『やったん』としか言えなかったんです。サチコち
ゃんはまだ3歳でしたから。
刑事さん、サッちゃんを殺した憎い犯人を、一刻も早く捕
まえてください!」

「任せてください!」

真坂刑事は力強く頷くのでした。

・・・マサカの結末!?