『床屋の真髄』 | 店舗探し.comの過去コラム

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2010/11/30

 

「ヘアカット&シャンプー&シェープ&ヘアセット。
 〆て18,400円~」
 
デフレ時代にあって1000円カットなど低価格化の流れにある
理美容業界で、時代錯誤かとも思える高料金で営業を
続ける、理容店の老舗「米倉」のサービスとはどんなもの
なのか、そのすべてが明らかにされています。
 
『床屋の真髄』
   米倉 満著  講談社
 
著者は、創業90年を超える理容「米倉」の4代目社長です。
彼の祖父はかつて、松下幸之助氏が、あまり容貌に注意
せず、ぞんざいなところが多かったので、苦言を呈したそうです。
 
「あなたは自分で自分の顔を粗末にしているが、これは
 商品を汚くしているのと同じだ。会社を代表するあなたが
 こんなことでは、会社の商品も売れません。
 散髪のためだけでも、東京に出てくるというような心がけ
 がなければ、とても大をなさない。」
 
松下氏はこれに大いに感心し、以来、容貌に意を用いる
ようになったと自著『一日一話 仕事の知恵・人生の知恵』
(PHP研究所)で述べているそうです。
 
「米倉」が心掛けるサービスは、予約の電話を受ける声の
出し方に心を配ることから始まります。
来店したお客様の顔色・体調を見極めては椅子にヒーターを
入れたり、足を温めたりするのは当然の気遣いです。
 
店の造作はもとより、鏡の大きさ、店内に流す曲の選定にも
信念をもって臨みます。
 
さらに、技術、理論、教養を三位一体として修行を積み、
理容師的人格を高めるために精進し続けるのです。
 
これほどサービスに対する意識を常に高くして、自信とプラ
イドを持っている老舗の社長にして、低価格理容大人気の
現状は、大いに気になるようです。
本書でも1000円カットの大手「QBハウス」について紙数を
割いています。
 
人間の欲求には限りがありません。
 
「低価格でありながら、高い質のサービスも実現する。」
 
矛盾する2つの命題を、一時に解決する答を見出した者
こそが、サービス業の王者となるのでしょう。