2011/7/27
東京といえども、所詮は一地方にすぎません。
ここにあるのは、かつてあった「東京風」という文化です。
『宵越しの銭 東京っ子ことば~秋谷勝三老人聞き書き』
林えり子著 河出書房新社
変貌し続けるのが都市の宿命だとはいえ、このままでは東京
の風俗、習慣、言葉が無くなってしまう。
東京は湯島(文京区)の生まれでもある著者はそんな状況に
危機感を持ち、三代続いたれっきとした江戸っ子である秋谷
さんから取材を重ねて東京の言葉や意気地を書き留めました。
“「江戸っ子は宵越しの銭を持たない」って言いますが、こ
れは宵越しの食物は腐る、銭もそれと同じでじっと持って
いると腐る。
「銭はきれいにつかえ」という意味なんです。
金はゴミと同じでためておくと汚くなります。銭はためて
はいけません。”
早く届けなければならないお金が停滞して澱み、あちこちで
腐臭を放っています。
「まったくお上のお偉いさんときたらどうだい。
【芝居の関取】じゃあるまいし、見掛け倒しでしょうがね
え。まるで【焼けた稲荷】で取りえがない(鳥居がない)。
【ホタルのけつは火種にはならない】ってけど、よくもま
あ、なんにもならないことをしてるもんだ。
あああっ、おかげでこちとら景気はまるでダメ。【カメの
子が煮こごり】に遭ったようで、手も足もまるっきりだし
ようがない。
【浮き難儀、本当にたまらねえ。】
なに?小言をぶつぶつとうるせえだと?
けっ!
【梅にウグイス、竹にはスズメ、おやじは小言としみった
れ】と相場が決まってんだい、バカヤロウ!」
気の短い江戸っ子だったらきっと、こんな風にまくし立てた
ことでしょう。