チリババの教え | 店舗探し.comの過去コラム

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2014/2/10

「健全なる精神は健全なる身体に宿る」

高校時代に地理を教えていただいた先生は、定年間近の女教師
でした。
“チリババ”とあだ名された先生から習ったことの大半は端から
忘れてしまいました。

先生との思い出と言えば、テストでわからなかった問題の解答欄
に「チリバーバ」と書いて提出したら、必要以上に大きくバッテ
ンがつけられていたことでしょうか。
脇には「お前は出っ歯のチンパンジー」と殴り書きされており、
友人に見せたら爆笑されました。

受験科目としても地理を選択しなかったので、授業も身を入れて
聞いていませんでしたが、一つだけ鮮明に覚えていることがあり
ます。
それは、冒頭の箴言に関する解説です。

「ユウェナリスは“健全なる精神は健全なる身体に宿る”と言っ
 たのではありません。
 正確には“健全なる精神は健全なる身体に宿るのが望ましい”
 と言ったのです。
 つまり、健全でない肉体には健全な精神が宿らない、との解釈
 が入り込む余地はないんです。

 ところが、ナチス・ドイツが意図的に捻じ曲げて“望ましい”
 の部分をカットして喧伝した名残りで、そのまま誤解して伝え
 られることが多いのです。」

穏やかなチリババ先生にしては珍しく、気負いこんだ様子でお話
しされたために印象に残ったのでしょう。

「望ましい」とあると無いとでは大違いです。

「(こうあることが)望ましい」と言うのは、実際にそうではない
場合が多いからなのです。

「望ましい」と思っていることが実現できないことはとても多い
のです。

1、2、3、3、2、2。

小学校6年間の運動会における、私の徒競走の順位です。
小学校生活を締めくくる最後の運動会で、絶対に1位になるのだと
そういう巡り合せになっていると信じ切っていました。
そうすれば小学校の前後半の成績がきれいに対称に並ぶからです。
結局、望みはかなわず、収まりの悪い成績に居心地の悪い思いを
いつまでも引きずっていました。

今でも、小学校の運動会について思い出すと真っ先に浮かぶのは
あの、望んでいて実現できなかった最後の1位のことです。

7、6、5、4、4。

上村愛子選手、残念でした。

一段一段順位を上げてきた上村選手が、今回メダルを取ることは
私たちみんなが望んだことでもありました。
ここまで歯を食いしばって頑張ってこられた上村選手の口惜しさ
は、察するに余りあります。

しかし、オリンピックにどうしても出場することができずに消え
去っていった多くの無名選手や、誰よりも健全な精神の持ち主で
ありながら、身体に障害のある方。
そして、小学校最後の運動会で望みが叶わなかった元少年・・・。

多くの人たちが、望んでいたのに叶わなかった我が事として、
メダルを獲得できなかった上村選手のことを、いつまでも深く、
胸に刻むに違いないでしょう。