隠れた脳 | 店舗探し.comの過去コラム

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2012/1/17

あなたが投資家なら、新規上場するクェオウン社とアダーレー社
では、どちらに投資したいと思いますか?

・・・アダーレー社に投資した方が株価が上がる確率は高くなり
ます。

『隠れた脳 ~好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』
    シャンカール・ヴェダンタム著 インターシフト

ニューヨーク証券取引所で株式公開した企業の中から、簡単な名
前の会社10社、難解な名前の会社10社の株価の推移を調べたとこ
ろ、取引初日の株価は、簡単な名前の会社のほうが11.2%も高か
ったそうです。
6ヵ月後、その差は27%にも達し、1年後には33%も高くなったそう
です。

投資家たちの“隠れた脳”は発音しやすい名前を安心感と、発音
しにくい名前を不安と結びつけたのです。

しかし、投資家たちはそうした無意識のバイアスである“隠れた
脳”の存在を自覚することはありません。自らが慎重に判断して
取引を決定していると信じて疑わなかったはずです。

心臓を動かす、呼吸を保つ、寝ているとき寝返りを打つ、これら
も脳がコントロールしていますが、やはり無意識な“隠れた脳”
の働きにゆるものです。

町を歩いていて、ある人を見かけると、目が吸い寄せられ、思わ
ず息をのむ。
他人に惹かれるこの気持ちは、どこから生じるのでしょう。

その人の特徴をリストにし、自分の好みのリストと照らし合わせ
て、好きになろうと心に決めるわけではありません。
ここにも“隠れた脳”による無意識の認知バイアスが働いている
のです。

私たちは災害で100人が死んだと聞いたとき、1人が死んだときの
100倍悲しむわけではありません。
意識の上で漠然とそのような結論に至るかもしれませんが、腹の
底からそう感じることはありません。

それも“隠れた脳”の管轄で、隠れた脳には1人の死と100人の死
の違いを区別する目盛りが無いのです。

無意識を意識するのは困難です。

それは障害が自分の中にあるからです。
しかし、著者は言います。

「本能や直感より理性を優先できるのは、人間をこれまで存在し
たあらゆる動物との間に一線を画する、特筆すべき性質である。
そしてまた、理性こそがバイアスを防ぐ唯一の手段なのだ。」

理性で克服すべき“隠れた脳”の正体を知るためにも、是非、
本書をご一読ください。