『無私の日本人』 | 店舗探し.comの過去コラム

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2013/1/10

「【無私】をテーマに生きていく!」

昨年、本書を読んだ時から、心の底でひそかに思い定めて
いた今年のテーマです。

『無私の日本人』
  磯田道史著 文藝春秋

著者の磯田道史さんは静岡文化芸術大准教授で、映画にも
なった『武士の家計簿』の著者でもあります。
本書には、無私の日本人として穀田屋十三郎、中根東里、
大田垣蓮月の3人が取り上げられています。

吉岡宿は伊達藩の仙台城下から6里ほどにある貧しい宿場
です。
所拝領の地と言って、殿様の直轄領ではないために藩の
助成制度が受けられず、人馬を強制的に徴発される負担に
疲弊しきっています。

穀田屋十三郎は、菅原屋篤平治という知恵者と諮って驚く
べき秘策を考え出します。それは

「伊達藩に千両という、まとまったお金を貸し、その利息
を分配することで宿場衰亡の危機を乗り切ろう」

というのです。
この企ては徐々に賛同者を集めます。

千両を集めるために参加した者の中には、家財道具を売り
払い、銭湯代を切り詰め、断食までした者もあったそうで
す。

やっとの思いで集めた千両ですが、伊達藩に貸すまでが
また一苦労でした。

金に窮してのどから手が出るほど欲しいはずの伊達藩です
が、「先例主義」や行政手続きの煩雑さ、お上の理屈で余
分に金を出させようとの無理難題、と、今に変わらぬ官僚
組織に阻まれて遅々として進みません。

しかし、小役人と言ってもいいある代官の粉じんの働きも
あって、足かけ8年に及ぶ辛苦の果てに企ては実現します。

穀田屋十三郎は死に臨んで子ども達に言い残します。

「ひとつ、わが家が善行を施したなどと、ゆめゆめ思うな。
何事も驕らず、高ぶらず、地道に暮らせ。
ひとつ、これからも吉岡のために助力を惜しんではならぬ。
商売が続くのは皆々様のおかげと思うて、日々、人様に
手を合わせよ。」

中心人物であった穀田屋十三郎は立派です。
しかし、この企てを成功に導いたのは彼一人の功績ではあ
りません。

千両というお金は家族や奉公人の協力なくしてはできませ
んでした。
また、代官を始め、数多くの名もなき日本人が無私の善意
を積み重ねてくれなければ、決して成功することは無かった
でしょう。

国、地域社会、会社、家族・・・。

自分ではない誰かのために力を惜しまない【無私】の行動
が、家族、会社地域社会、そして日本に明るい未来をもた
らすのでしょう。