読書メモ「密室蒐集家」(大山誠一郎) | IN THE WIND

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例によって未読の作家で分厚くないものを書店で物色中、帯の「本格ミステリ大賞受賞」という宣伝文句に乗って手にしてみた。主人公が密室事件の謎を鮮やかに解いてゆく連作短編集で、巻末の解説者は絶賛しているのだけれど、余りにも荒唐無稽な主人公の設定を受け容れられるかどうかで、本作に対する評価は大きく分かれるだろう。


密室殺人事件が起きると、どこからともなく「密室蒐集家」を名乗る主人公が現れて捜査員や事件当事者の話を聴き、すぐに密室の謎を解いて犯人を言い当て、いつの間にか姿を消してしまう。本作に収録されている6編は戦中から21世紀初頭まで時代設定が異なるが、いずれでも主人公の存在は警察内部で伝説や噂として広まり、受け継がれてきたという。


そうして6編で事件を担当する刑事たちは主人公が登場すると、一様に「噂に聞いていたが本当にいたのか」と驚く。名前を聞いても「名乗るほどの者ではない。密室蒐集家と呼んでください」というだけ。警察が素性のわからない民間人を捜査に関わらせるはずはないのに、本作の刑事たちは主人公に捜査情報を与え、事件当事者にも会わせて話を聞かせる。


中には伝説の密室蒐集家の推理に期待する刑事もいるほど。さらにどの時代も密室蒐集家の風貌は30前後の二枚目風と決まっている。連作短編集に1パターンはあってもいいが、余りに荒唐無稽過ぎて脱力してしまう。警察が協力する訳は最後に収録の「佳也子の屋根に雪ふりつむ」で明かされるが、警察庁上層部にコネがあるというからもう何でもありだ。


ほかにも、通報を受けた刑事が一人で現場に赴くといった刑事捜査の常識に反するなどリアリティの欠如は挙げてゆけばキリがない。警察が解けないほどの密室の謎を考えた犯人の緻密さから考えられない殺人の動機の軽さもいただけない。密室の謎解き、犯人当てのロジックさえ優れていれば、本格ミステリとして認められるということなのか。(文春文庫)


【12日の備忘録】

休肝日2日目。朝=ご飯1膳、ベーコンエッグ、リンゴ、昼=チキン&レンズ豆カレー、夜=肉野菜炒め、ミニトマトと茹でブロッコリー。体重=59.2キロ。