読書メモ「自衛隊の闇組織 秘密情報部隊『別班』の正体」(石井暁) | IN THE WIND

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年末年始に自宅へ帰った際、TBSのドラマ「VIVANT」の総集編を家族が見ているついでに眺めていたら知らぬ間にハマってしまった。元々スパイとか工作員が登場する冒険小説が好きでもあり、実際の情報機関にも関心があったので、ドラマのモデルとなった自衛隊の「別班」とは何ぞやということで手に取った。

 

著者は内外のニュースを取材して主に地方紙やテレビ局に配信する共同通信社の記者。2013年11月末に別班の存在を報じた記事の取材者、執筆者だ。本書は端緒をつかんでから実際に記事として配信されるまで5年半にわたったという取材を振り返りつつ、別班を通じて自衛隊の諜報活動のあり方を問いかける。

 

別班の存在を知った著者が、内情に詳しい自衛隊内の関係者を割り出し、徐々に別班の実態に迫ってゆく過程は小説を読むようでもあり、なかなか読み応えがある。自衛隊幹部が著者の身の安全を案じて護衛を付けると申し出たといい、不気味にも別班の実在を裏付ける効果的なエピソードとなっている。

 

記事が配信された2013年は特定秘密法案が国会に提出され、賛否両論が激しく交わされていた。法が制定されれば別班などの諜報活動は特定秘密に指定され、ますます実態が分からなくなるという危機感が著者にはあり、粘り強くかつ慎重に取材を進めてなんとか記事にしようとした苦労も伝わってくる。

 

ドラマと全く同じではないが、別班は海外で身分を偽って情報収集や政治的、軍事的工作を手がけているようだ。自衛隊最高指揮者の首相や防衛大臣にも存在を知らせず、国会のチェックもなく武力組織である自衛隊が海外で活動するのは文民統制を逸脱するとして、本書は別班の存在そのものを問題視する。

 

記事が世に出ても自衛隊は今に至るまで別班の存在を認めず、政府も自衛隊の主張を検証することなく追認している。取材源の秘匿原則から取材相手が記事では匿名なのを逆手にとってか、当時の大臣は記者会見で「記事で証言した人物を教えてくれれば確認する」というふざけた対応を真顔で言ってるほどだ。

 

ドラマに脱線すると、警視庁公安部の刑事役の阿部寛が、別班員たちも愛国者で日本の安全を守るために任務を全うしようとしている、という趣旨のセリフを口にしていた。国のためなら別班のような秘密組織を批判してはならない忖度のような空気を生みはしないか、やや気になった。(講談社現代新書)


【22日の備忘録】
休肝日1日目。朝=ご飯1膳、鶏肉と根菜の煮物、昼=ご飯1膳、鶏肉と根菜の煮物、夜=鶏肉と根菜の煮物。体重=59.6キロ。