読書メモ「泥濘」(黒川博行) | IN THE WIND

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暴力団二蝶会幹部・桑原と、亡父が二蝶会幹部だった堅気の建設コンサルタント・二宮の迷コンビが、金もうけをめぐってだましだまされ、切った張ったのドタバタ劇を繰り広げる「疫病神」シリーズの第7作。今回も二人が間一髪で命拾いし、首尾よく金を手にすることができたかと思えばそうは問屋が卸さず、というお決まりのパターン。それでもテンポのいいストーリー展開にどんどん物語に引き込まれる。

 

ある歯科医院で架空診療による診療報酬詐取事件が発覚し、大阪府警が摘発。老人福祉施設を営む社会福祉法人が入居者や待機者の名簿や保険証情報を悪用して歯科医院を巻き込んでおり、桑原がカネの匂いを嗅ぎつけた。しかもその社会福祉法人は大阪府警OBでつくる親睦組織が深くかかわっていることや、別の暴力団ともつるみ、オレオレ詐欺にも手を染めていたのだ。

 

武闘派と頭脳派の両面を併せ持つ桑原の儲け話に巻き込まれ、いつもひどい目に遭いながらも金欲しさに行動を共にする二宮が、持ち前の知恵とはったりを駆使して、事の真相に近づいていく展開は本当にワクワクするし、二人が下手を打ちそうになる場面はまさにハラハラドキドキ。まるで目の前で上演されている芝居を見ているかのように思えるほど、人物造形や会話、情景描写がビビッドなのだ。

 

カネの亡者でタダでは動かないけれど、文句を言いながら桑原や二宮に情報提供して助け舟を出す府警の暴力団担当刑事の中川は今回も存在感たっぷり。桑原、二宮のコンビニとどまらす、中川を加えたトリオによる物語といっても言いぐらいかも。人を簡単に殴ったり、蹴ったりという暴力性はあるものの、ともかく一級のピカレスクロマン。次回作ではどんなドタバタが待っているのか。(文春文庫)

 

【29日の備忘録】

休肝日2日目。朝=ご飯1膳、ベーコンとシイタケのソテー、リンゴ、昼=ご飯1膳、豚肉とチンゲン菜炒め、ミニトマトと茹でブロッコリー、夜=トルティージャ。体重=58.8キロ。