ロシア語通訳者でありエッセイスト・小説家としても有名な故米原麻里さんが読売文学賞を受賞した著書です。
1か月ほど前、ある翻訳者の方がこの書物を例に挙げて翻訳の難しさを表現されたことがきっかけで、この本を手に取りました。
主に通訳の現場で起こる珍事件や迷通訳などを取り上げながら、言語と言語をつなぐ通訳・翻訳の業界の真実の姿を、喜怒哀楽の感情豊かで心の通った日本語表現で描いた名著です。通訳・翻訳業界に関連のない方でも、ある意味エンターテイメント作品として十分に楽しめる内容です。
この作品を読み終わり本を閉じる瞬間、米原麻里さんという偉大な人間がもうこの世にはいないんだ、というどうしようもない悲しさと喪失感を覚えました。通訳は「歩く言語変換機」ではありません。言語の土壌となっているその国の文化を知り、その言語が交わされるシチュエーションを理解し、決してマニュアル化できない人間関係の機微を誰よりも感じとって、黒子ながらも影の先導者としてその空間を仕切っていきます。
エリツィン元大統領さえ「マリ、マリ!」と親愛のキスをせがんで駆け寄ったという人望も併せ持つ米原さんのような方が、もうこの世にいないということは、日本の宝(特に日露関係上)を失ったに等しいのではないか、と。
私も今翻訳者への道を目指していますが、英語ができる歩く言語変換機を越える価値のある翻訳者になれるよう、米原さんがこの本の中で残した数々のメッセージを時々思い出そうと思います。
機械翻訳にはできないことがある!!だから⇒ 英語翻訳

