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いつからか、全身にアイスピックが鋭く突き刺さるような痛みと、焼けるような喉の渇きに、奥村の意識は引きずり回されていた。
意識朦朧とするなか、自分の生死すらわからないまま、ありえない幻覚をみていた。
佐知子との平穏な暮らしを、三崎大二郎は二人の業界追放という条件で許した。だが佐知子は、奥村より仕事を優先したいという。
祖父からも捨てられ、愛した人からも捨てられた奥村は、絶望の末、日本に対する復讐心が燃えたぎった。
蒋永春という中華民国の残渣を日本に産み落とした祖父も、いつしか日本を憎んでいたようだが、
奥村にとっては、蒋介石も日本も憎しみでしかなかった。
研究者としての輝かしい未来をぶち壊した全てを殲滅させたいという憎悪そのものが全身の痛みなのだと気づいた瞬間、
写真で見たことしかない祖父が突如現れた。
奥村は、憎しみの言葉を吐き出した。すると祖父の顔はずるりと剥け、佐知子の顔へ豹変した。奥村は絶叫した。
己の悲鳴で完全に覚醒した奥村は、新宿区救命センターにいないことに気づいた。
医療設備のない、豪奢な洋室に一人寝かされていたことに驚いた。
猛烈な痛みが全身を駆け巡るなか、懸命に頭を働かせようと試みた。それは、医師奥村隆史から革命家蒋永春へと替わった瞬間だった。
(つづく)
この小説はフィクションであり、作品に登場する団体や個人は実在しません。