瞳との食事は思いのほか楽しむことができた。
瞳は話し好き。
三郎は聞き上手。
惰性で生きている三郎には気取った姿勢もなく、
ただ瞳の話を聞くこが新鮮だったのだ。
仕事でも若い女性と話す機会がなかった。
「娘さんとは?」
「あの子は妻の連れ子でね。
ずっと話がかみ合わないまま、
家を出て行ったんだよ」
「私は三郎さんと話してて楽しいけどなあ」
「冗談いっちゃいけない。こんなメタボリックオヤジが」
「私、父親がいないから、
三郎さんくらいの年上男性が好みなんです」
慣れない三郎はどぎまぎしたが、
自殺予防策だと頭で必死に否定した。
しかし、アルコールがさらに瞳のアプローチを積極的にさせ、
疑心暗鬼だった三郎もようやく瞳の本心を受け止めた。
だが、自分の人生と瞳の人生には大きく、深い隔たりがあるのだ。
三郎は深入りを避け、湧き上がってくる欲求を隠し通した。
翌日、また瞳と会うことになるとは思いもよらずに…
(つづく)