(『人間革命』第11巻より編集)
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〈波瀾〉 3
信心の世界というものは、あくまでも清潔に保たなければ、どのような宗教であれ、たちまち腐敗・堕落する。
これが宗教の恐ろしさでもあった。
ゆえに、世間的な権力や金力を、宗教の世界で流通させてはならないのである。
戸田は、力を込めて言った。
「事業家は、金を持たなければならない。政治家は、権力を持たなければならない。
しかし、学会は信心をもって活動し、運営しなければならないというのが、学会の精神であり、私の精神なのであります。
信心のことなら、戸田と太刀打ちしても負けるものかという相手であれば、私も受けましょう。
私は何事にも驚かない。金にも、権力にも、驚かぬ。
しかし、信心だけは怖い。だが、私は、信心には自信がある。不肖な私だけれども、日蓮大聖人のお使いとして、七百年後の今日におるのであります。
もし、『創価学会なんてインチキだ。デタラメだ』と言う人がいるなら、言わしてやろうではありませんか。
どんな結果になるか、見ていてごらんなさい。私は、断じて負けません。三年かからずに結果を見せてあげますよ。
これが信心というものです。金でもなければ、権力でもない。
学会の地位を使って、金儲けしたり、権力者のような行動したなら、必ず罰を受けるということを、今日は宣言して、私の話を終わります」
厳しかった冬を越えて、今年も一日ごとに春めく時節となった。
二月十一日、満五十七歳の誕生日を迎えた戸田は、激増する会員のために、一日一日の広布の旅路を、どう開拓していくべきかと心を砕いていた。