(『人間革命』第11巻より編集)
13
〈転機〉 13
約一カ月の後、十一月の山口闘争が始まった時、増田は山本伸一を追いかけて、防府の旅館にやってきた。
伸一は、彼を見るなり、いたわるように聞いた。
「山口の増田さん、その後、ご病気はどうですか」
増田は、不機嫌そうに答えた。
「まだ、治りません」
「この前より、ずいぶん顔色がよくなりましたね」
天邪鬼な増田は、突っかかるように言った。
「信心と人相と、どういう関係があるんですか?」
しかし、伸一は、疑い深い増田のために、さらに激励するのだった。
後日、リウマチは徐々によくなっていったが、ある時、高額な洋服生地を盗まれてしまった。
彼は、信仰しても碌なことはないと思い、上京し、学会本部に山本伸一を訪ねた。
「これまで信心してきましたが、碌なことがなく、さっぱり気が晴れません」
山口から、はるばる文句を言いに来た増田の言葉を、伸一は黙って聞いてから、つつみ込むように言った。
「あなたの心中はお察ししますが、まず、大事なことは、疑わず信心をやりきることです。
過去の罪業が出ているんです。どんなことがあっても、退転だけはしてはいけません。困ったことが起きたら、また、すぐにでも相談にいらっしゃい」
増田一三は、確信ある指導と温かい激励を山本伸一から受けても、相変わらず心の底で文句を言っていた。
しばらくすると、また盗難に遭った。”信心すればするほど、ひどい目に遭う”と腹を立てた増田は、また、上京して山本伸一に訴えた。
伸一は、この時ばかりは厳しい口調で叱った。