(『人間革命』第11巻より編集)
6
〈転機〉 6
戸田は、伸一に話をもちかけるように言って、あちこちの弱体の県を指さした。中国や九州にある弱体の県は、一、二にとどまらない。
戸田の指は、山口県でとまった。伸一は数字を読んだ。
「四百三十世帯。こんなもんだったんですか。これはひどい。山口県の人口をちょっと調べてみましょう」
伸一は、会長室を出ていった。
会員世帯は、東京都は十万を優に超え、関西も六万を超え、長野県では七千世帯に迫っている。
山口県がこのままでは、中国方面の広宣流布は、大きく遅れをとってしまうにことになりかねない。
「先生、山口県の人口は約百六十万です」
伸一は、部屋に戻って報告しながら、統監部から借りてきた書類をめくった。
「山口県の世帯数四百三十の内訳を見ますと、たいたい二十八支部に所属しております。
一番固まっているのは、下関市ですが、これも各支部に所属しているので、おそらく指導の手は届いていないと思われます」
わずかな時間に、伸一は、素早くこれだけのことを調べあげていた。
要するに、全県下に世帯が散在していて、各世帯は、ほとんど所属支部からの連絡もなく、それぞれ孤立しており、互いに会員であることすら知らないでいるらしい。
戸田は、伸一の報告に応じながら、すぐさま一つの腹案を語った。
「これまでは、地方については自然に任せて、夏季指導などで刺激を与え、後から組織をつくってきた。
しかし、もう学会もこれまでになると、未開拓の弱体地方は、学会の組織を動員して育成するということも、考えなければならぬ時代に入ったようだ。これも転機だよ。
伸一君、君も、この転機の先駆けとして、一つ山口県で、指導・折伏の旋風を起こしてみないか」