(『人間革命』第5巻より編集)
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〈驀進〉 13
校正刷りは、出始めると、印刷所から洪水のごとく回されてくるものである。
校正担当者たちは、数日続けて徹夜しなければ追いつけぬ時もあった。しかも、それを喜んで引き受けたのである。
春が来た。名もない学者たちは、真剣に、そして希望に胸ふくらませて、完成に務めた。
四月三日から十五日まで、連日、午後から深夜まで、全員が印刷所に出張し、三校、四校と念を入れていった。
この間も、幾たびとなく畑毛の日亨のもとを訪ね、筆を煩わせなければならなかった。
戸田の指揮下、全員の団結は見事なもので、ほとんど徹夜に近い作業を続行しぬいたのである。
学会の伝統は、幹部が泥まみれになって、先頭を行くところにある。そして、後輩が安心して、信心と生活とに邁進できるように、道を開いていく。
他の組織の団体とは、見事な一線を画した実践の姿が、そこにあった。
未來への未聞の栄光の道を開拓していくためには、それ以外にあり得ないと信じていたからである。
御書発刊と同時に、学会員は、すさまじい勢いで、立宗七百年祭の日をめざして活動に邁進し続けた。
前年秋からの会員の激増によって、これまでの総会の会場は、全会員を収容できなくなっていた。
四月七日の春季本部総会は、会場を千代田区神田駿河台の中央大学講堂に移して挙行する方針が決定された。
それは、七百年祭を目前に、各支部が躍進の姿を鮮明にあらわすものとなった。
つまり、これまでの学会本部の努力が実り、各支部が着実に力をつけ始めた結果であるといってよい。
戸田が、第二代会長に就任して以来、わずか十カ月での成長であった。
各支部の伝統は、この苦闘の時期に築かれたのである。