(『人間革命』第2巻より編集)
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〈光と影〉3
戸田は、どの質問にも、穏やかではあるが、厳然と応答した。
「しかし、君が、ここで考えなければならないことは、心から信じるに足るものが、果たしてこの世にあるか、ないかということだ。
結論的に言って、日蓮大聖人は、一切の不幸の根本は、誤った宗教・思想にあると断言していらっしゃる。
そして、正しい宗教・思想は、なんであるかをご存知じだったから、あらゆる迫害に屈せず、命をかけ、大確信をもって、お説きになったのだ。
その正しい宗教の根本法を、南無妙法蓮華経という。
大聖人様は、末法の不幸な民衆を憐れんで、その根本法を、御本尊という形で残された。それが、ここの家にもある、あの御本尊様です。
観念論でも、空論でもない。このご本尊を対境として、自身の仏の生命を涌現(ゆげん)して、自己の最大最高の主体性を確立し、人間革命していく宗教です。
ずいぶん飛躍した言い方をすると、君は思うかもしれない。それは君が、まだ仏法の真髄を、全然、知らないからだ、ともいえると思う。
天文学の知識がなければ、天文学の真髄は、ちょっとわからない。数学も、経済学も同じだ。
この仏法のことも、教学(きょうがく)的に理解できれば、理論的にも当然の帰結として、正しい宗教であることがわかる。
全宇宙現象の鏡に照らして、正しい生命の法がある。
人が知ろうが知るまいが、厳然として存在しているのだ。
これを真実の仏法というのです。
この根本法を知らないでは、何をしようが、本源的に誤ってしまう。