(『人間革命』第2巻より編集)
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〈序曲〉 1
昭和二十一年十一月三日ー 新憲法、つまり「日本国憲法」が公布された。
平和主義を理念とするこの第九条が、好戦国と思われた日本に出現したことは、世界の人びとにも、一種異様な不思議さとして受け止めれたにちがいない。
マハトマ・ガンジーは、喝破(かっぱ)した。
「宗教の欠如した政治は、国家の首を吊(つ)るロープであります」
この言葉を、政治家も、国民も、深く心に刻むべきであろう。
この頃、戸田城聖は、ある未明、寝床の上で考え込んでいた。
彼には、戦力ならびに戦争放棄の条文が、最初は極めて不自然なことに思えた。
彼の思索の糸口は、”この憲法を現実化していくことのできる政治形態は、いかなる形態であろうか”と思いいたった時、強く未来の光明をつかんだのである。
ー どのような主義、政治形態であれ、戦争放棄をうたった憲法を、どのように生かしていくかは、主権者・国民一人ひとりにかかってこよう。
この根本である人間の改革が、不可欠となろう。
本当に人間とは、出来の悪いものだ。どんなに善意に満ちていたとしても、次の瞬間、悪縁に遭えば、何をしでかすか、わかったものではない。
そのようにできているのが、人間の本性である。
数多くの政治家の限界も、ここにある。
彼らに、第九条を永久に維持する能力があろうとは、とうてい思えない。
人びとの悲願である戦争放棄を、実現するためには、今までにない、全く新しい理念を必要とするであろう。
それは、何か・・・。