ドラマ「幸色のワンルーム」なかなかのエンディング。 | 休日の雑記帳

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鑑賞した映画や書籍の感想記録です。
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制作年:2018年

制作国:日本

 

漫画で少し読んで気になっていた作品のドラマ化です。原作との違いがどの程度なのか気になりますが、割と好みのエンディングでした。

 

☆あらすじ☆

 

学校ではいじめられ、家庭では虐待されてきた少女。自殺を図ろうとしたところ、「お兄さん」に止められ、そのまま誘拐される。お兄さんの部屋の壁には一面に少女の盗撮写真が飾られていた。異様さに驚くも、どこにも行き場のなかった少女は「幸」と名付けてもらい、お兄さんと共に暮らす。

 

お勧め ★★★★☆

 

お兄さんは幸に危害を加える気配がなく、幸には自殺以外に選択肢がなかったと考えると、文字通り幸せな同居生活だったわけですが、永遠に続けられるわけがなく、どのようなラストを迎えるのかと気になっていた作品でした。ハッピーエンドにするのは難しい設定だと思いましたが、なるほど、こうなりましたか。

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

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いわゆる「メリーバッドエンド」ですが、最初から詰んでるお話をかなりうまくまとめたものだと思いました。

 

一番意外だったのが、お兄さんが幸に恋愛感情をいだいていなかったところ。だからこそ幸に手を出すことなく、安全な生活を提供できたわけですが、恋愛ではなくても執着ではあり、なかなか複雑な心情が描かれていて興味深い作品でした。

 

お兄さんの半生は深くは語られませんが、幸よりもっと過酷な人生を送っていて、自殺を考えても実行する勇気がなかったところ、自分と同様に不幸そうな少女、幸を見つけました。幸は自分と同じく、死にたくても死ねない少女だと思っていたのに自殺を遂げようとしている。それが許せなかったお兄さんは、幸の自殺を絶対に邪魔したいと考えて幸を誘拐したのでした。

 

そんなひねくれた心情は、幸を幸せにするという思いへと変化していきました。一方幸は、お兄さんの部屋をみてそれなりの怖さを感じつつも、お兄さんの恋愛感情(ではなかったけど)を利用して自分の身を守り、平和な生活をできるだけ長く送りたいと願うようになりました。

 

幸を安全な状態で日常生活に戻したいお兄さんと、お兄さんを誘拐犯にしたくない幸。そんな二人を待っていたのは、お兄さんの死でした。どんな事情があっても、どんなに当人たちが幸せでも、今の法律では誘拐犯と被害者になってしまう二人。生きながらのハッピーエンドならお兄さんの服役は免れなかったとは思いますが、幸の誘拐事件を追っていた刑事たちが、彼らに罪はないと考えていたのが印象的でした。

 

お兄さんの死から数年後、ウェディングドレスのような白いワンピースに身を包み、お兄さんがかつて住んでいた空き部屋で自殺を遂げた幸。壁にはお兄さんと撮った写真が一面に貼られています。その現場には、何とも言えない表情をたたえた刑事の姿がありました。このエンディングはかなり良かったと思います。無音、無言で、法には触れたけど何も悪いことをしていなかった男女が引き裂かれ、少女が後を追った自殺現場でやるせない気持ちを呑み込んでいる刑事。何も語られないけどすべてが伝わってくる素晴らしいラストでした。

 

死後の世界か、死に向かう朦朧とした意識下での幻覚か、幸はお兄さんと結婚式を挙げているのですが、マスクを外したお兄さんが誰だかわからず、一瞬違うのと結婚してるのかと思ってしまいました・・・いや、マスクの力すごいですよね。外すだけで全く誰だかわからなくなるという経験は、コロナ禍で何度か経験しましたが、ドラマの中でも体験することになるとは・・・お兄さん、別にマスクしてなくてよかったんじゃないかと思いました。