ドラマ「女王の教室」 | 休日の雑記帳

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鑑賞した映画や書籍の感想記録です。
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制作年:2005年

制作国:日本

 

天海祐希さんが美しくて恐ろしく、彼女の演技を見るだけでも価値のある作品でした。

 

☆あらすじ☆

 

小学6年生になった神田和美は、小学校最後の一年を素晴らしいものにしたいと、期待に胸を膨らませていた。しかし和美の担任教師、阿久津真矢は、厳格で冷酷な鬼教師だった。あまりに理不尽な阿久津のやり方に反発する生徒たちだったが、次第に阿久津の厳しいながらも嘘のない指導に感化されていく。

 

お勧め ★★★☆☆

 

学園熱血教師モノとしては可もなく不可もなくですが、天海祐希さんの凛とした立ち姿、姿勢の良さ、発声の明朗さ、そして無表情、仏頂面でもあれだけの美しさに見惚れる作品でした。

 

その美しさ故に、小学生の担任としては厳しすぎる指導の怖さも際立っていました。私が小6の時の担任が彼女だったら、ひと月またずに登校拒否になったと思います・・・

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

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阿久津の指導方法には大いに問題があると思いますが、彼女の目指す指導方針にはいつも一貫した正しさがあり、嘘偽りや生徒への媚びやきれいごとといったものが一切なく、この姿こそ、生徒への真の愛情だったのだということが、最終回+スペシャルドラマまで視聴してよくわかりました。

 

阿久津には人の心があるのか、情が動くことがあるのかと思ったものですが、むしろ阿久津の本質は人一倍優しく情に溢れ、それ故の弱さや生徒に対する媚びや遠慮が強く、さらに人から好かれたい、良く思われたいという承認欲求も相まって、なんとも頼りなく、舐められた教師だった過去とのギャップが印象的でした。

 

この頃の阿久津は、生徒を正しく導ことより自分がよい教師と思われることを優先していました。しかし、気にかけていた生徒からの虚言によって教職を追われ、失望するも、これをきっかけに当時交際していた男性と幸せな結婚をし、最愛の息子にも恵まれました。しかしそんな日も長くは続かず、良かれと思っての教育方針が息子のストレスとなり、間接的に息子を死なせてしまう結果となりました。

 

夫とも離婚し、再び失意のどん底に落とされた阿久津でしたが、かつで自分を陥れた元教え子のSOSに応え、命を懸けて向き合い、救ったことから、再度教師として生きる決意を固めるのでした。次こそは、甘くて優しいいい先生ではなく、真に生徒のために厳しくもできる教師になろうと覚悟を固めた阿久津の姿が、舐められていた新米教師の頃と和美たちの前に現れた鬼教師の姿の中間のようになっていて、阿久津の変遷がよくわかり、非常に面白いシナリオでした。

 

このクラスでも大問題が発生し、刃傷沙汰にまでなるのですが、腫物のような児童に正面からぶつかり、暴力も暴言も厭わず、正しい道を命がけで示した阿久津の信念は見事でした。「どうして人を殺してはいけないんですか」こう問いかける生徒の命をぎりぎりまで追い詰めて、痛いから、苦しいから、殺さないでと叫びたくなるから、死んだら取り返しがつかないから、すべてを失ってしまうから、と語り続けた阿久津は、世間からは常軌を逸した暴力教師としか見えませんでしたが、阿久津の本気と向き合わされた生徒にとっては一生に一度の重要な場面となったと思います。

 

口で言って聞かせてもわからないのなら、実体験で学んでもらう。今の世の中では許されない方法ではありますが、現状のぬるい教育が本当に正しいのかも疑問ではあります。このような大事件を経て、さらに冷静無比な女王となった阿久津でしたが、真の愛情は最終的には生徒たちの心に響き、阿久津の生徒たちにとって、この一年は生涯の宝になったものと思います。

 

いじめをなくすのではなく、決してなくなることのないいじめに対処できる大人に育ってほしい。阿久津の理想はこれからの時代にも一番正しいものであるような気がしました。

 

阿久津の鬼教師っぷりには大人も怯むほどですが、エンディングでは天海祐希さんが素敵な笑顔で踊っており、ああこれはドラマなんだなとほっとします。エンディングが一番好きかもしれない、そんな作品でした。